フジテレビの親会社フジ・メディア・ホールディングス（ＨＤ）の株主総会が２５日、東京都内で開かれる。元タレントの中居正広氏による同局元アナウンサー女性への性暴力が第三者委員会に認定され、一連の対応からガバナンス（企業統治）不全も露呈した。フジ・メディアＨＤは改革のための取締役人事案を提案する一方、事態を問題視した大株主の米投資ファンドも独自の人事案を株主提案しており、結果が注目される。

　フジ・メディアＨＤは、次期社長候補の清水賢治専務（フジテレビ社長）や前ファミリーマート社長の沢田貴司氏ら１１人の取締役選任を提案している。対する大株主の米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」は、約４０年間にわたり取締役として君臨した日枝久氏の体制が終わり「これまで生じた課題の解消と、フジテレビの放送・メディア事業の発展を実現するための取り組みが求められている」と主張。ＳＢＩＨＤの北尾吉孝会長兼社長ら１２人を社外取締役に入れるよう株主提案している。

　株主は取締役候補ごとに賛否を表明できる。株主の過半の賛成を得た候補のうち、賛成率の上位から定員の１８人まで選任される。

　機関投資家に影響を与えるとされる米議決権行使助言会社２社の判断は割れた。インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ（ＩＳＳ）は、フジ・メディアＨＤ側の取締役選任案への賛成を推奨し、ダルトンの提案には反対を促した。一方、グラスルイスは、フジ・メディアＨＤ側の提案は兼務が多いなどとして沢田氏ら２人の反対を推奨し、清水氏ら９人については賛成した。ダルトンの提案には北尾氏ら５人への賛成を推奨、７人へ反対を勧めている。

　企業統治に詳しい出見世信之・明治大教授は、仮にダルトンの候補が取締役に選任されれば「たった一人でも、これまでの経緯から社会を代表する視点や役割が期待される可能性があり、フジ・メディアＨＤは一層透明性の高い経営が求められることになる」と指摘。退けたとしても「今後、ダルトンを含む多くの株主の支持を得るためには、経営陣がいかに株価を上げていけるかが重要になる。今回の株主総会だけの対策に終わると、次年度以降、厳しい状況に追い込まれるかもしれない」と警鐘を鳴らす。【植田憲尚】