トランプ関税25%、日本企業に重い負担 拠点見直しや輸出控えも

2025/07/08 20:42 

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 トランプ米大統領が日本からの全ての輸入品に対し、8月1日から25%の関税を課すと自身のソーシャルメディア上で明らかにした。発動済みの一律分の税率10%から、企業にはさらに重い負担がかかることになる。関税交渉の長期化やトランプ政権の予測不能な動きを見越し、拠点見直しや輸出を控える企業も出てきている。

 情報機器メーカーのセイコーエプソンは、売り上げと利益の約2割を米国で稼ぐ。関税コストは価格に転嫁するが、値上げによる販売数量の減少などを加味し、2026年3月期に事業利益ベースで80億円の減益要因になると見込んでいる。

 対策として、これまで中国で生産していた米国向けのプロジェクターなどについて、周辺の国に比べて税率の低いフィリピンでの生産に切り替えを進めているという。7月1日の記者会見で吉田潤吉社長は「現段階では顕著な影響は表れていない」とした上で、「フレキシビリティー(柔軟性)をもって気を緩めず対処していきたい。影響を極小化する努力を続けていく」と述べた。

 カシオ計算機は5月の決算記者会見で、関税影響を避けるべく米国向けの時計や楽器の一部で出荷を停止していると説明した。当面は現地の在庫でしのぐが、カシオは日本以外に中国やタイなど、トランプ政権が高関税を課す国が主な生産拠点で、体制見直しも検討している。

 ソニーグループは、26年3月期の営業利益に1000億円程度の関税影響が出ると試算している。家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)5」について、生産拠点の分散や米国内の在庫積み増しといった対応を取っている。

 トランプ政権が4月2日に「相互関税」を発表した際、日本の関税率は税率10%の一律分と一時停止中の上乗せ分を含め24%だった。発表された税率は更に数字が上乗せされることになる。

 ただ、トランプ氏は1日に日本の関税率を30%超に引き上げる可能性も示唆していたため「25%の関税率は想定内」との声も聞かれる。ある電機メーカーの関係者は「米政権の政策は不確実性が高く、関税率や発動時期はさまざまなパターンを想定し影響を試算していた。今回の決定にそこまで大きな驚きはない」と淡々と語った。

 帝国データバンクが6月に実施した企業へのアンケート調査(有効回答企業は1万435社)では、トランプ関税について、40・7%の企業が1年以内にマイナス影響があるとみている。今後5年程度では44%の企業がマイナス影響があると回答した。米国への進出を計画していたが、取りやめた(機械製造)という声も出ている。【成澤隼人】

毎日新聞

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