日産社長「国内はこれ以上削減ない」 追浜工場の車両生産終了へ

2025/07/15 19:49 

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 経営再建中の日産自動車は15日、国内主力拠点である追浜(おっぱま)工場(神奈川県横須賀市)の車両生産を2027年度末に終了すると発表した。同工場での車両生産は、日産九州(福岡県苅田(かんだ)町)に移管する。また、子会社の日産車体湘南工場(神奈川県平塚市)でも26年度に生産を終了することを明らかにした。販売低迷で過剰になった生産体制を整理し、業績回復に向けて本格的な再建策に踏み込む。

 日産のイバン・エスピノーサ社長はこの日、本社(横浜市)でメディア向けの説明会を開き、工場の生産終了について「大きな痛みを伴う改革だ。再び成長軌道に戻るためには、やりきらなければならない」と理解を求めた。

 今回の決定は、27年度までに国内外にある計17工場を10工場に統合し、グループ従業員の約15%に当たる2万人を削減するなどとした経営再建計画の一環。

 追浜工場は1961年に創業を始めた歴史の長い工場で、現在は「ノート」などを生産している。エスピノーサ社長は「技術の日産の象徴で誇り」と表現したが、近年は小型車の不振で稼働率が低迷していた。

 追浜工場が立地する追浜地区にある総合研究所や衝突試験場、専用の港湾施設などは継続させる。生産終了後の追浜工場の活用方法は幅広い選択肢を検討し、最善策を模索する。工場の土地活用では台湾の受託生産大手・鴻海(ホンハイ)精密工業とも協議を進める。

 ただ、エスピノーサ社長は「今日決定したのは車両生産を終了するということ。(将来の活用方法は)複数パートナーと協議しているが、詳細は報告できない」と述べるにとどめた。

 追浜工場に勤務する従業員は、27年度末まで同工場での勤務を継続する。その後の雇用や勤務について、従業員や労働組合と速やかに協議する。追浜工場では約2400人が車両生産にかかわるが、追浜の他部署や、他の生産工場への異動などを通じて影響を最小限に抑えるとしている。

 エスピノーサ社長は「国内ではこれ以上の(生産拠点)削減はない」と強調した。一方、湘南工場の従業員への対応は子会社の日産車体の判断によるとして明言を避けた。【鶴見泰寿、加藤美穂子】

 ◇地元首長ら「残念」

神奈川県の黒岩祐治知事は15日夜、「このような結果になり残念でならない」とコメントした。日産と取引がある企業が県内には1700社以上あり、「日産自動車や日産車体に対し、サプライヤーへの説明や従業員の雇用などでの丁寧な説明を強く求めていくとともに、関係自治体などと適切に対応していく」とした。

 日産追浜工場がある横須賀市の上地克明市長は「雇用の中心となる生産拠点がなくなることは大変残念」とコメント。市民に不安が広がっているとして、日産に「工場跡地をどう活用していくかも含め、できる限り速やかに公表してほしい」と要求した。市として「地元への影響が最小限となるよう必要な支援や対応に全力を尽くす」とした。

 日産車体の湘南工場が立地する平塚市の落合克宏市長も「日産車体の今後の動向を注視するとともに、必要な協議を進めていきたい」とのコメントを出した。【蓬田正志、福沢光一、澤圭一郎】

毎日新聞

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