「駆け込み寄付」続くふるさと納税 いよいよポイント付与禁止に

2025/09/30 11:15 

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 ふるさと納税は、特典ポイントを付与する仲介サイトを通じた寄付の募集が10月1日から禁じられる。

 ポイント還元による「恩恵」が手に入る最後のチャンスである9月30日には「駆け込み寄付」による仲介サイトへのアクセス集中も予想される。

 ◇前年比2倍

 「コイン還元ラストチャンス 最大100%還元」

 「ポイントが抽選で最大1000%当たる」

 ふるさと納税の仲介サイトでは、さまざまなキャンペーンを展開して需要の取り込みに力を入れてきた。

 仲介サイト「ふるさとチョイス」の運営会社トラストバンクが20歳以上の1103人を対象に行い、7月に発表したアンケート「ふるさと納税体験に関する調査2025」によると、過去にふるさと納税を利用した経験者のうち76.5%が9月末までに「駆け込み寄付」を予定していると答えた。

 駆け込みの動きは、実際に数字にも表れている。

 「楽天ふるさと納税」の広報担当者によると、今年8月の仲介した寄付額は前年同期と比べて2倍に上ったという。

 ◇返礼品の登録も増

 寄付を受ける自治体側もうれしい悲鳴を上げる。

 昨年度は寄付受け入れ額が総額173億5000万円で、全国の自治体の中で5位だった北海道別海町。今年9月23日までの1週間の寄付額は前年同期比で524%と急伸した。

 ホタテやイクラなどの海産物に加え、バターやアイスクリームなどの乳製品といった人気の返礼品をアピールしてきた。

 「ふるさとチョイス」の広報担当者によると、返礼品の登録数は9月1~25日で前年同期比1・6倍に増えており、自治体側でも「駆け込み寄付」に照準を合わせた対応を取っていることがうかがえた。

 ◇ポイント廃止後を見据えた動きも

 総務省は2024年6月、仲介サイトがポイント付与を競う形で寄付者を囲い込んでおり、本来のふるさと納税の趣旨を離れて競争が過熱しているとしてポイント付与を禁じる制度改正を発表した。

 別海町の担当者は「仲介サイトのポイントによるPR効果は大きかった。サイトへの掲載手数料が物産展などの費用と比べて不当に高いといえるものではなかっただけに残念」と惜しんだ。

 既に「ポイント廃止後」を見据えた自治体の動きもある。

 9月の最後の週末、横浜市で開かれたふるさと納税をアピールするイベントには大阪府などの複数の市町が参加した。

 昨年度の寄付受け入れ額が全国3位だった大阪府泉佐野市は来年完成予定のビール工場を舞台にした体感型返礼品の宣伝に力を入れていた。

 担当者は「ポイント制度は返礼品に注目を向けてもらい、話題作りにも効果がありました。今後は返礼品をきっかけとして来訪してもらい、関係人口を増やしていけたら」と期待を語った。

 ◇いよいよ迫る締め切り

 特典ポイントを付与する仲介サイトを通じた寄付が可能なのは30日深夜、日付が変わるまでだ。

 それまでに決済を完了させることが必要だが、クレジットカードの認証やサイトへのアクセス集中で手続きに時間がかかることも予想される。

 各仲介サイトでは、余裕を持った寄付を呼び掛けているが、注文の殺到による品切れや配送の遅れも想定される。

 交流サイト(SNS)をのぞくと返礼品や寄付限度額の試算などについて情報交換が行われており「寄付だけ済ませて、返礼品は後から選べるものがおすすめ」などの攻略方法の紹介もある。

 「お得」が魅力のふるさと納税だが、欲に溺れず気持ち良く地域貢献したい。【山崎明子】

毎日新聞

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