<BeMe>施政方針演説で「女性」言及が激減 男女格差是正「緩む」懸念も

2026/03/07 15:30 

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 「成長のスイッチを押して押して押して……」。高市早苗首相がそう訴えた2月20日の施政方針演説では、過去の首相と比べて「女性」の文字が激減していた。

 歴代首相は就業機会の拡大や所得格差の是正などを演説に盛り込み、女性の表記が複数回登場する演説が多かったが、高市氏は1回のみだ。初の女性首相となった高市氏の女性政策をどう読み解けばよいのか。

 ◇本文に「女性」1回 歴代首相と比べると

 施政方針演説は、年の初めの国会で政権が重視する政策を説明するものだ。核となる重点項目のほか、各省庁にまたがるテーマに広く触れるのが一般的だ。女性関連の政策は、演説の中盤から後半に登場するケースが多い。

 2020年以降を振り返ると、安倍晋三(20年)、菅義偉(21年)、岸田文雄(22~24年)、石破茂(25年)の4首相の演説では、就労機会や役員登用の拡大、犯罪対策といった文脈で、「女性」の言葉が2~8回登場した。「女性の活躍を全力で後押しします」(岸田氏)、「若者や女性にも選ばれる地方」(石破氏)と直接的な表現も目立った。

 高市氏が唯一「女性」と表記して訴えたのは健康問題だ。「女性の生涯にわたる健康支援を強化します」。国民の所得増加策では男女格差に触れず、人材総活躍の項目で「日本人の誰もが、日本国の主役」「性別、障害や疾病の有無、生まれた年代や住んでいる地域、家族の状況などによって、不公平がない社会を」と表現した。育児や介護による離職を減らす考えも示した。

 ◇「女性に配慮、感じられず」

 政治とジェンダーをテーマに研究する東海大の辻由希教授は「演説に多くの政策が盛り込まれたが、どの属性が対象なのか、歴代首相に比べてはっきりしない印象だ」と指摘。「高市首相は、国民や企業が『頑張ること』を大切にする政治家で、結果の平等より機会の平等を重視する傾向にある。女性など特定の属性に配慮する考えはあまり感じられない。非正規の待遇改善にも触れていない」と分析する。

 16年に女性活躍推進法が施行し、国は「女性版骨太の方針」を定め、企業などに男女の格差是正を求めている。30年までに東証プライム上場企業の役員の女性比率を30%以上とする目標も掲げる。

 辻教授は「方向性は変わらないだろうが、以前の政権は国の本気度を示して企業に変革を促してきた。今後、こうした雰囲気は緩むかもしれない」と懸念する。

 演説では、性別などに左右されない国民の自己実現を応援する意思はにじむが、現状は家事育児の女性への偏りや、男女の賃金格差は大きい。近年の歴代政権も女性政策として重視してきた。

 辻教授は「自民党では、女性政策に理解がある男性政治家は評価される一方、女性政治家たちが女性政策を声高に言うと冷ややかに見られてきた。高市氏が女性政策に抑制的で外交や防衛、経済成長を前面に出すのは、こうした土壌が影響しているのかもしれない」と推し量る。【久野洋】

毎日新聞

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