史上初の韓国大統領逮捕、今後の可能性 失職、内乱罪では死刑も
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」の宣布を巡り、高官犯罪捜査庁(高捜庁)と警察などで作る合同捜査本部は15日午前10時半すぎ、内乱容疑で尹氏を逮捕した。韓国の現職大統領が身柄を拘束されたのは史上初めて。
◇抵抗も衝突もなく
大統領は憲法で不訴追特権が保障されているが内乱罪は例外。首謀者として内乱罪が裁判で確定すれば死刑、無期懲役または無期禁錮となる。捜査本部は3日にも逮捕を試みたが大統領警護庁に阻止されていた。
合同捜査本部は15日早朝、ソウルの大統領公邸で逮捕状の再執行に着手。警護庁が抵抗することを想定し、警察は3200人態勢で臨んだ。だが大きな抵抗はなく、高捜庁検事らは午前8時40分ごろには公邸の建物内に進入。尹氏を逮捕した。高捜庁関係者は「(逮捕状の)執行を積極的に阻む人はいなかった。衝突も事実上なかった」と述べた。
尹氏は逮捕前後のタイミングで国民向けの談話映像を発表。「不法で無効な手続きだ」と逮捕に強い不満を示し「流血の事態を避けたいという気持ち」のために逮捕に応じると説明した。
聯合ニュースによると、尹氏は逮捕前に与党議員らと公邸で懇談。出席した議員は「(尹氏は)前日、眠れなかったらしい。すごく疲れていた」と語った。
逮捕された尹氏は15日午前10時50分ごろ、ソウル郊外の京畿道果川市にある高捜庁の庁舎に移送された。検事は直後の午前11時から午後9時40分まで休憩時間を挟み計約8時間にわたり尹氏を取り調べた。高捜庁関係者によると、尹氏は黙秘権を行使して供述を拒否した。
◇憲法裁判所の判断次第で失職
尹氏は取り調べ後、ソウル拘置所に移送された。
尹氏は国会による弾劾訴追で大統領の職務停止に追い込まれたが、警護などの特権は維持。逮捕されても失職しないが、尹氏の弾劾訴追について審理中の憲法裁判所が弾劾を妥当だと判断すれば失職する。
尹氏は2024年12月3日夜、政府提出の予算案の一部を減額したり、検察官らを繰り返し弾劾したりする野党の行為を「内乱を企てる反国家行為だ」と非難し、戒厳令を出した。特殊部隊の一部が国会議事堂に突入したが、国会は混乱の中で戒厳令の解除を要求する決議を可決。憲法に基づき大統領は従わねばならず、尹氏は4日未明に戒厳令を解除した。
◇今後の刑事手続きは
高捜庁は今回、日本の刑事手続き同様、裁判所が発付した「逮捕状」に基づき尹氏の身柄を拘束した。この後は48時間以内に、おおむね20日間の拘束が可能になる令状を請求するか、尹氏を釈放する必要がある。裁判所は検事側と尹氏側の意見を聞く「令状審査」を経て令状発付の可否を決定する。
韓国の捜査当局は「逮捕状」に基づく手続きを経ずに直接、20日間の拘束令状を裁判所に請求することもあり、これによる拘束を「逮捕」と呼ぶ場合もある。【ソウル日下部元美、果川(韓国北西部)福岡静哉】
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