ガザ停戦で中東は安定に向かうのか イスラエルとイランの対立がカギ
パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルの停戦合意を受け、中東地域に広がった紛争が収束に向かうかが注目される。ハマスに連帯する形でイスラエルを攻撃してきた武装組織は、武力行使を取りやめる条件にガザの停戦を挙げていたからだ。ただ、こうした武装組織を支援するイランとイスラエルの緊張は続いており、地域情勢が安定化に向かうのかは見通せない状況だ。
中東では2023年10月にハマスとイスラエル軍の戦闘が始まったのを機に、レバノンやイエメンなどの周辺国に展開する親イラン武装組織がイスラエルや駐留米軍などを標的にした攻撃を活発化させた。
レバノンではイスラム教シーア派組織ヒズボラがイスラエル北部への砲撃を繰り返し、イスラエル軍は空爆と地上侵攻で応戦した。昨年11月に停戦したが、互いに「停戦合意違反」を主張し、停戦発効後もイスラエル軍による空爆が散発的に続く。
イエメンの親イラン武装組織フーシ派も、イスラエル領内や紅海などを航行する船舶に無人機攻撃などを繰り返してきた。ロイター通信によると、フーシ派の報道官は15日の声明で、イスラエルは「引き続き地域の安定に対する脅威であり続けている」と述べ、今後も敵対的な行動を続ける可能性が残る。
一方、親イラン武装組織が活動していたシリアでは、昨年12月のアサド政権崩壊を受けて、イスラエル軍が各地の軍事施設を標的に激しい空爆を実施。この機に乗じてシリア南部にも侵攻した。
最大の焦点は、これらの武装組織を支援しているイランとの対立関係だ。イランは昨年4月と10月、イスラエル領内に大規模なミサイル攻撃を行った。イスラエル軍は10月、報復としてイラン国内の軍事拠点を空爆。イランはさらなる報復を検討しているとされる。
ガザの停戦合意が実現したことにより、イランの軍事行動の可能性は当面は低くなったとみられる。だが、イスラエルはイランの核武装に対する警戒心が強い。イランへの強硬姿勢を示すトランプ米次期大統領の就任を機に、ネタニヤフ政権がイランの核施設を攻撃する恐れも指摘されている。
ロイター通信によると、米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は14日、イランがイスラエルによる空爆などで弱体化したことで核武装を再検討する可能性を示唆した。今後のイランの動き次第では、イスラエルが何らかの行動を起こす懸念がある。【カイロ金子淳】
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