ミャンマー国境で外国人を拘束 特殊詐欺に加担させる事件相次ぐ

2025/01/16 12:44 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 中国やタイと国境を接するミャンマーの一部地域で、犯罪組織にだまされた外国人が特殊詐欺などに加担させられる事件が相次いでいる。今月上旬にはタイ北西部メソトから連れ去られた中国人俳優が、詐欺の実行役を強制されていたことが判明。警察当局は人身売買に巻き込まれる恐れがあるとして、旅行者らに対し国境周辺に近づかないよう呼びかけている。

 タイ北西部ターク県の警察などは14日に合同対策会議を開き、国境警備隊などと協力して警戒を強めることを確認した。タイのペートンタン首相はサイバー犯罪や国境を越える犯罪の撲滅を掲げるが、ミャンマー側の政情不安で国境付近が組織犯罪の温床となっている。

 タイ当局は2024年11月にもメソトの対岸にあるミャンマー東部ミャワディから、中国人らによる特殊詐欺グループに拘束されていたという32人のスリランカ人を救出。国境地帯ではだまされた外国人が監禁状態に置かれ、被害者には日本人も含まれるとの情報がある。

 シンクタンク「米平和研究所」は24年5月の報告書で、ミャンマーやラオス、カンボジアなどが中国系の犯罪組織の拠点となっていると指摘。違法なオンラインカジノや特殊詐欺による世界的な損失は23年末時点で少なくとも年間640億ドル(約10兆円)に上るという。

 21年2月のクーデターで実権を握った国軍の関連組織によってミャンマーの詐欺拠点が保護され、抵抗する少数民族武装勢力との間で紛争の要因になっていると指摘している。

 ミャンマーではクーデター後の経済の低迷により、働き口を求める若者らがSNSで虚偽の求人情報にだまされたり、誘拐されたりしてサイバー犯罪に関与させられるケースも急増。中国と国境を接する東部シャン州で活動する人権保護団体「シャン人権基金」は23年10月、1000人以上が犯罪行為に加担させられていると警鐘を鳴らしていた。【バンコク武内彩】

毎日新聞

国際

国際一覧>