尹大統領、取り調べを拒否 「昨日すでに十分に立場表明した」

2025/01/16 10:05 

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 15日に内乱容疑などで逮捕された韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は15日夜、ソウル近郊の京畿道果川にある高官犯罪捜査庁(高捜庁)での取り調べ後、車で10分ほどの距離にあるソウル拘置所へ移送された。韓国メディアによると、現職大統領が拘置所に収容されるのは初めて。尹氏側は15日は休憩を挟んで約8時間にわたり高捜庁の取り調べに応じたが、16日は取り調べを拒否する方針を示している。

 聯合ニュースによると、高捜庁は16日午前からの取り調べを予定していたが、尹氏側が健康上の理由を挙げて延期を要請。高捜庁は午後2時から取り調べを実施する方針を示した。だが尹氏の弁護団は聯合に対し「尹大統領の健康状態が良くなく、昨日十分に立場を表明した」として、16日午後も取り調べを拒否する意向を明らかにした。

 高捜庁は近く、尹氏を引き続き拘束するための令状をソウル西部地方裁判所に請求する方針。裁判所が請求を認めれば、尹氏は起訴まで最長で20日にわたり拘束される。

 一方、尹氏側は15日、今回の事件の管轄は逮捕状を発付したソウル西部地裁ではなくソウル中央地裁だと主張。ソウル中央地裁に対し、逮捕の適否について判断を求める審査を請求した。ソウル中央地裁は、早ければ16日にも審査を行う。

 高捜庁は、拘束の継続に関する令状を逮捕(15日午前10時33分)から48時間以内に裁判所に請求しない場合、尹氏を釈放しなければならない。ただ、聯合によると、ソウル中央地裁が捜査関係書類を受け取ってから逮捕の適否について判断し資料を返還するまでの時間は、この48時間に含まれない。

 高捜庁は、尹氏による昨年12月3日の「非常戒厳」の宣布について、尹氏を「内乱の首謀者」と位置づけている。高捜庁は200ページ超の質問書を準備し、15日は尹氏に対して休憩を挟んで約8時間の取り調べを行った。だが、尹氏は黙秘権を行使し、供述を拒否している。

 聯合ニュースによると、尹氏は15日の取り調べ終了後、調書に押印せず、代理人の尹甲根(ユンガプクン)弁護士が代わりに押印した。容疑者本人の押印がない調書は今後の裁判で証拠として採用されない。尹弁護士は、近く意見書を高捜庁に提出する方針を示している。

 尹氏側は逮捕後の15日午後、尹氏本人のフェイスブックに肉筆の手紙の写真を公開した。新年に書いたものだという。この中で、尹氏は「不正選挙があった」と改めて主張。国会で過半数を占める野党について、外部勢力と結託した「反国家勢力」だと非難し、「巨大野党の一連の行為は国家非常事態と判断した」と戒厳令を正当化した。

 また16日午後2時からは憲法裁判所で、国会による尹氏の弾劾訴追を受けた裁判の第2回弁論が予定されている。憲法裁が弾劾訴追を妥当だと判断すれば、尹氏は失職する。

 聯合ニュースによると、尹氏の弁護団は15日、憲法裁に対し、弁論の期日を延期するよう求める書面を提出した。尹氏が15日に逮捕され、長時間にわたり検事の取り調べを受けたため、弁論の準備を十分にできなかったことを理由に挙げている。尹氏は14日の初弁論には出席しなかった。【果川(韓国北西部)福岡静哉】

毎日新聞

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