韓国の刑事手続き、日本との違いは? 尹大統領の逮捕劇に特殊な事情

2025/01/26 14:58 

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 戒厳令宣布を巡り、内乱容疑で逮捕された韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領について、韓国メディアは近く起訴されるとの見通しを伝えています。日本と韓国の刑事手続きには共通点が多いのですが、違いもあります。どこが違うのでしょうか。韓国通の記者が解説します。

 Q 韓国の大統領が15日に逮捕(たいほ)されたね。日韓の刑事手続きはどう違うの?

 A 似ている部分と大きく違う部分とがあります。似ているのは身体拘束(こうそく)の手続きとして日韓ともに「逮捕(拘束できるのは48時間)」と「勾留(こうりゅう)(同20日間)」という二つがあるところです。「逮捕」は韓国語でも同じですが、「勾留」のことは「拘束」と呼びます。

 Q 違うところは?

 A 日本は先に逮捕、次に勾留という順番に必ずなる「逮捕前置主義」を取っています。しかし、韓国では逮捕状請求(せいきゅう)の手続きを飛ばして、いきなり「拘束令状」を請求できます。

 Q 48時間拘束する「逮捕」の手続きは取らない場合があるということ?

 A その通りです。その場合、拘束令状が発付されて初めて容疑者(ようぎしゃ)の行動の自由が奪(うば)われます。日本メディアによる韓国の事件報道では多くの場合、この「拘束」のことを「逮捕」と呼んできました。特に日本でも関心を持たれるような政財界の要人が絡(から)む事件では、捜査当局が容疑者に出頭を求め、事情を聴(き)いた上で直接、拘束令状請求に進む場合が多いためです。

 ◇通常は拘束してから逮捕、今回は…

 Q 今回の尹氏の事件ではどうだったの?

 A 尹氏の場合は、やや特殊(とくしゅ)でした。尹氏が出頭を拒否(きょひ)したため、高官犯罪捜査庁(こうかんはんざいそうさちょう)(高捜庁)は逮捕状を請求しました。そうすると、まず逮捕、次いで拘束と日本と同じ順番になります。高捜庁が17日に拘束令状を請求した時点で、尹氏は既に逮捕されて拘置所(こうちしょ)に入っており、日本の勾留請求とほぼ同じ形だったと言えます。

 Q もし尹氏が出頭に応じていたら?

 A 実は、その場合は「逮捕状」請求の手続きはできませんでした。韓国では、逮捕状発付のためには①罪(つみ)を犯(おか)したと疑(うたが)うに足る②出頭要請に応じない――という2要件を満たす必要があるからです。回答・米村耕一(外信部)

毎日新聞

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