トランプ政権の大量退職勧奨 マスク氏「分岐点だ」 職員らに不安

2025/01/29 11:49 

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 トランプ米政権は28日、連邦政府の大半の職員を対象に退職を勧奨した。主要米メディアが報じた。2月6日までに退職に応じれば、9月30日までの給与が支払われる。NBCニュースによると、対象は約200万人で、政権高官はそのうち「5~10%が退職に応じる」と見込んでいる。トランプ大統領は連邦政府の抜本改革を公約にしてきたが、前例のない大規模な人員削減になる可能性がある。

 報道によると、ホワイトハウスの人事管理局は28日、新たに整備した連邦政府の全職員向けの一斉メールで退職を勧奨した。メールに「resign(退職する)」と返信すると勧奨に応じたとみなされる。米軍、郵便公社、移民政策や国家安全保障関連の一部の部門は対象外で、各機関が独自に退職勧奨の対象外の範囲を決めることも認める。

 トランプ政権は、従来認められてきた政府職員のリモート勤務の廃止を決定。今回の退職勧奨には、出勤を望まない職員らが応じると見込んでいる。

 こうした方針は、歳出削減に取り組む「政府効率化省(DOGE=ドージ)」トップで実業家のイーロン・マスク氏が提唱していた経緯があり、今回の方針に影響を与えた可能性もある。マスク氏は今回の方針に関して、Xに「分岐点だ」と投稿した。

 ホワイトハウスは27日に連邦政府による助成金や公的融資の支出を凍結し、内容を精査する方針を示すなど、連邦政府の方針転換を急激に進めている。支出凍結の対象範囲が明確にされず、年金や公的医療保険、貧困層への食料配給に影響が出るとの懸念が拡大し、政権は「公的支援の施策に影響はない」と火消しに追われた。連邦地裁が28日に支出凍結の一時差し止めを命じたが、政権の極端な手法に不安が広がっている。

 政府内では、職員に大統領選の投票先などを尋ねる「適性検査」や、DEI(多様性、公平性、包括性)施策の廃止などに戸惑いが広がっているとも報じられている。異論を許さない体制に嫌気が差して、退職希望が増加する可能性もある。

 トランプ氏は連邦政府の官僚機構を「ディープステート(影の国家)」の一部とみなして敵視してきた。20日の就任後、各省庁で幹部職員の解職や配置換えを進め、リベラル色の一掃を図っている。民主党や共和党の反トランプ派からは、政権交代と関係なく勤続する連邦政府の職員に「歯止め役」を期待する声もあったが、行政内部から批判の声を上げるのは難しくなりつつある。【ワシントン秋山信一】

毎日新聞

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