ガザ人道危機「制御不能」 子供1.7万人が孤児に 栄養失調も深刻

2025/04/06 10:30 

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 パレスチナ自治区ガザ地区でイスラエル軍による攻撃が激化している。軍は北部や南部で一定の領土を「安全地帯」として確保する方針を示し、地上作戦を拡大。ガザの封鎖も解除の見通しが立たず、住民は度重なる避難や物資不足にあえいでいる。イスラム組織ハマスとの戦闘開始から7日で1年半を迎える中、人道危機はもはや「制御不能」との声も出ている。

 ガザ地区では1月19日に一時停戦が発効したが、イスラエルは3月18日、ハマスが要求を受け入れないとして空爆などの大規模攻撃を再開。約3週間で死者は1000人を超え、停戦合意は事実上崩壊した。

 イスラエルのカッツ国防相は2日の声明で「(ガザの)広大な地域をイスラエルの安全地帯に組み込むため占領する」と述べ、地上作戦の拡大を宣言。軍は南部ラファや北部シュジャイヤなどに部隊を広く展開し、攻勢を強めている。

 ガザ保健当局やパレスチナ中央統計局(PCBS)によると、これまでの戦闘によるガザ側の死者は3日時点で5万523人に達し、このうち約1万8000人は子供だった。子供だけで凍死者は17人、餓死者は52人に上る。また、少なくとも片方の親を亡くした子供は3万9384人で、うち約1万7000人は両親を失い孤児となった。

 一時停戦後、南部へ避難していた住民は北部への帰還が認められたが、攻撃再開後は再び各地で退避を迫られている。国連人道問題調整事務所(OCHA)などによると、ガザの65%が立ち入り禁止となり、少なくとも28万人が新たに避難を余儀なくされた。

 水や食料、医薬品などの不足も悪化の一途をたどっている。検問所を支配するイスラエルは3月2日、ガザ封鎖を再開して支援物資の搬入を停止。9日には電力の供給も止めた。これにより、住民の主要な「水源」である海水の淡水化装置を稼働できず、ガザの水供給量は通常の3分の1まで落ち込んだ。

 小麦粉や燃料も枯渇しており、今月1日にはガザにある製パン店がすべて閉鎖に追い込まれた。OCHAのまとめでは、人口約210万人の9割にあたる195万人が食料不足に直面。妊婦と2歳未満の子供の92%は栄養不足で、6万人以上の子供が急性栄養失調で治療を必要としている。

 インフラの被害も甚大だ。すでに建物の約7割と主要道路の約8割が破壊され、家屋の約9割が損壊した。187万5000人が緊急でシェルターを必要とし、「人道危機は文字通り制御不能になっている」(OCHAのガザ担当者)。

 一方、停戦に向けた交渉は難航している。ロイター通信などによると、仲介国のエジプトやカタールは3月、ハマスが人質5人を解放する代わりに50日間停戦する案を提示し、ハマスは受け入れを表明した。

 ところが、イスラエルは別の停戦案をハマス側に提示。さらに多くの人質解放を求めたとみられるが、ハマス幹部は今月2日、ロイター通信に「イスラエルの対案には返答しないことを決めた」と明らかにした。

 双方の妥協が見えない中、ガザの人道状況は日に日に悪化している。国際社会も有効な手立てを打ち出せないのが現状だ。【カイロ金子淳】

毎日新聞

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