インドとパキスタンが即時停戦で合意 アメリカが仲介 衝突収束へ

2025/05/10 21:47 

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 インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方を巡る武力衝突に関して、トランプ米大統領は10日、自身のソーシャルメディアに「米国の仲介により、インドとパキスタンは即時の完全停戦に合意した」と投稿した。欧米主要メディアが伝えた。印パ両国の外務当局者も合意を認めた。

 インド側の発表によると、現地時間10日午後5時(日本時間午後8時半)に停戦が発効した。関連して、印パ両軍の幹部は12日に協議する。両軍関係者は10日午後に電話協議し、戦闘停止で一致したという。

 米国務省は、バンス米副大統領とルビオ米国務長官が「48時間」にわたって両国と協議した結果、即時停戦に合意したと発表した。ルビオ氏は声明で「インドのモディ首相、パキスタンのシャリフ首相の賢明さや、和平の道を選んだ政治手腕を称賛する」と述べた。

 インドとパキスタンはカシミール地方の領有権を巡って80年近く対立してきた。同地方のインド側支配地域で4月22日、武装集団による銃撃テロ事件があり、観光客ら26人が殺害された。インド政府はパキスタンの関与を主張し、今回の衝突が始まった。

 インド軍は7日以降、パキスタン領内などを空爆した。一方のパキスタン軍も10日にインド軍基地などを攻撃したと発表した。核保有国同士の対立は深刻度が増していた。一転して、事態が完全に収束するか注目される。

 パキスタン軍の発表によると、インド軍が10日未明、パキスタン側の軍事施設3カ所をミサイル攻撃し、うち1カ所は首都イスラマバード近郊だったという。防空システムが作動し、ミサイルは迎撃されたとしている。

 これを受け、パキスタン軍は、インドにある複数の軍ミサイル貯蔵所や軍事施設を攻撃したとしている。一方でインドはカシミール地方のインド側支配地域を中心に民間施設を狙った攻撃があったと主張し、民間人の犠牲者が出ていると非難していた。

 ロイター通信は10日、パキスタン軍の発表として、シャリフ首相が核兵器の管理を統制する「国家指令本部」(NCA)の会議を招集したと報じたが、その後、アシフ国防相が開催を否定した。

 パキスタンのダール副首相兼外相はこの日のテレビ番組で、「インドがここで立ち止まるなら、ここで立ち止まることを考える」と述べ、自制する用意があると表明していた。

 これに対し、インド軍は10日、パキスタン軍による攻撃について「すべての敵対行為に対し、適切で効果的な対抗措置が講じられている」と強調した。

 一方でインドはカシミール地方のインド側支配地域を中心に民間施設を狙った攻撃があったと主張し、民間人の犠牲者が出ていると非難していた。インド軍はパキスタンのレーダー基地などの軍事施設を標的に反撃したとしている。

 一連の武力衝突は7日にインド軍が4月に起きた銃撃テロ事件の報復として、カシミールのパキスタン支配地域やパキスタン領内を空爆したことで始まった。

 当初インド軍は攻撃対象はあくまでテロリストの施設でパキスタンの軍事施設は標的にしていないと強調していた。しかし、その後は双方の軍事的な応酬が続き、標的の対象は両国内にある軍事施設などにも拡大している。

 こうした中、国際社会の懸念も強まっていた。

 米国のルビオ国務長官は9~10日にインドとパキスタンの外相らと相次いで電話協議し、双方に緊張緩和と直接対話を促した。

 インドのジャイシャンカル外相はルビオ氏との協議後、X(ツイッター)で「インドのアプローチは常に慎重かつ責任あるもので、今後もそうあり続ける」と表明した。【ニューデリー松本紫帆、ワシントン松井聡】

毎日新聞

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