核廃絶訴えた米国家情報長官 「たった1発で、数分で…」脅威強調

2025/06/11 09:21 

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 ギャバード米国家情報長官は10日、広島を最近訪問して被爆の実相に触れたことを明かし、核兵器を廃絶する必要があると主張する動画をX(ツイッター)に投稿した。「核の破滅の崖っぷちに最も近づいている」との現状認識を示し、「私たち市民が声を上げ、狂気に終止符を打つ必要がある」と主張した。核超大国である米国の現職閣僚が核兵器への反対を公に表明するのは極めて異例だ。

 ギャバード氏は約3分半の動画の冒頭、最近広島を訪れ、「1発の原爆によって引き起こされた想像を絶する惨禍の傷痕が残る、その街の中心部に立った」と語り出した。訪問について「私が目にしたもの、耳にした物語、そして今も心に残る悲しみを言葉で表現するのは難しい。この経験は私の中で永遠に生き続けるだろう」と述べ、強く印象に残ったと明かした。

 動画では、1945年の原爆投下直後の街や被爆者の映像などを流しながら、被害の甚大さや原爆のもたらした影響の深刻さを説明。「長崎も同様の運命をたどった」などと語った。また、被爆者らが極度の火傷、放射線被害などの「痛み」を数十年にわたって抱えてきたと紹介し、被爆者らによって描かれた絵画について「絵画が伝える苦痛と喪失感は写真そのものよりもはるかに強烈だった」などと感想を話した。

 現在の核兵器の威力は当時とは比べものにならないほど強く、「たった1発で、たった数分間で数百万人を殺す可能性がある」と指摘。使用されれば「核の冬」が訪れ、生態系全体を破壊するとも強調した。

 そのうえで、「政治エリートや戦争推進派は、核保有国間の恐怖と緊張を軽々しくあおっている」と主張し、「核による惨禍を恐れることなく生きることができる世界を目指さなければならない」と呼びかけた。ただし、トランプ政権としてどう核軍縮に取り組むのかなどについては述べなかった。

 ビデオが撮影された時期は不明。米メディアによると、ギャバード氏は先週、ジョージ・グラス駐日大使とともに在日米軍基地を訪問したという。

 ギャバード氏は米領サモア出身で、元々は民主党員。2013年から21年までハワイ州選出の連邦下院議員を務め、20年大統領選に向けた民主党候補指名争いに参戦したこともある。しかし、下院議員を退任した後は保守寄りになり、24年に共和党入りした。【ワシントン西田進一郎】

毎日新聞

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