「原子炉を稼働させる能力奪う」 イスラエル軍のイラン重水炉攻撃

2025/06/19 19:50 

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 イスラエル軍は19日、イラン西部アラクの重水炉を攻撃したと明らかにした。アラクが本格的な攻撃を受けるのは初めてとみられ、イスラエルがイランの核開発能力を弱体化させる意思を改めて示した形だ。イランメディアによると、放射能漏れは確認されておらず、死傷者もいなかった。

 イスラエル軍や国際原子力機関(IAEA)によると、アラクの重水炉はプルトニウムの抽出が可能だが、完成はしていなかった。標的となった原子炉も稼働しておらず、核物質もなかったという。攻撃に先立ち、軍は19日未明に周辺住民に退避勧告を出していた。

 アラクは首都テヘランの南西約250キロにあり、近くには重水製造施設もある。プルトニウムも核兵器の原料となるため、欧米などはウラン濃縮とは別の形で核兵器を開発できるとして、重水炉の存在を問題視してきた。2015年にイランと結んだ「核合意」では、兵器級プルトニウムの抽出ができないように改修すると決められていた。イスラエル軍は今回の攻撃について、「原子炉を稼働させる能力を奪うため」だったとしている。

 また、軍は中部ナタンツでも「核兵器に使われる部品や設備」を攻撃した。ナタンツではこれまでの攻撃により、地上と地下にあるウラン濃縮施設が損傷し、内部で放射能汚染が確認されている。カッツ国防相は19日、「(イランの)体制を弱体化させるため」、テヘランの政府施設などへの攻撃を強化するよう軍に指示したと明らかにした。

 一方、イランもイスラエルに向けた弾道ミサイル攻撃を続けた。イランの精鋭軍事組織・革命防衛隊は、「超重量級」の最新鋭ミサイルを使用したとしている。

 イスラエルメディアによると、19日の攻撃では南部ベエルシェバの病院などにミサイルが着弾し、各地で重傷者少なくとも6人を含む271人が負傷した。

 イラン側は、病院に隣接する軍の施設を標的にしたと主張している。病院では事前に患者をシェルターなどへ避難させており、「多くの命が救われた」(病院関係者)という。イスラエルのネタニヤフ首相はX(ツイッター)で「テヘランの暴君に完全に代償を支払わせる」と述べた。【金子淳(カイロ)、古川幸奈】

毎日新聞

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