NATO、防衛・関連費目標をGDP比5%で最終合意へ トランプ氏に配慮

2025/06/25 12:05 

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 米欧32カ国で構成する北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は25日、加盟国の防衛費目標を現行の国内総生産(GDP)比2%から3・5%に引き上げ、防衛に必要なインフラ整備などの防衛関連費と合わせて5%に拡大する案で最終合意に達する見通しとなった。

 米国は日本を含むアジアの同盟国にも、NATOと同水準まで防衛費を引き上げるよう求めている。日本は2027年度に防衛費をGDP比2%まで増やす計画だが、NATOが今回合意に達すれば、日本が28年度以降の防衛費を議論する際に一つの指標になる可能性がある。

 NATOの説明によると、5%の中核となる3・5%の防衛費目標は、各加盟国の具体的な兵力、装備の増強策を定めた新しい軍事力目標に基づいて算出した。詳細は公表されていないが、NATOは5日の国防相会合で21年に設定された軍事力目標を約3割引き上げ、加盟国全体で防空とミサイル防衛を現在の5倍の規模に増強する方針で合意していた。

 一方、1・5%の防衛関連費は、兵員や戦車を輸送するための橋、港などのインフラ整備やサイバー防衛、民間の防衛準備が含まれ、各国に「関連費」の定義を判断する余地を残した。

 5%の目標達成期限は当初案では32年とされたが、加盟国間の意見が分かれ、ぎりぎりの交渉が続いている。

 防衛費と防衛関連費を合わせた5%の目標値は、トランプ米大統領が加盟国に求めてきた数値と一致しており、トランプ氏への配慮が顕著だ。

 ただ、米国も24年の防衛費はGDP比3・19%で、合意すれば、財政状況が厳しい中で防衛費の上積みを求められることになる。トランプ氏は24日に「彼ら(他の加盟国)は払うべきだ。でも我々は払わなくてもいい」と一方的に主張した。

 NATO加盟国全体の防衛費のGDP比は、冷戦のさなかだった50年前の1975年(当時は加盟15カ国)に4・7%だったのが、冷戦終結後の92年(同16カ国)には3・7%に低下。24年は2・61%に落ち込んでいる。

 加盟国の防衛費をGDP比で最低2%とする現行の目標は、ロシアがウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合した14年に設定された。その後、22年2月からのロシアによるウクライナ全面侵攻と露軍の急速な軍備拡大で、欧州の安全保障環境は激変し、NATOの危機感はさらに増した。

 ただ、GDP比2%の目標を達成した国は現在、加盟32カ国のうち22カ国にとどまる。加盟国の防衛費総額の6割を米国が占めるなど米国依存が常態化していた。

 頼みの米国もNATOへの関与低下は避けられない状況だ。中国の軍備拡張や台湾有事、北朝鮮への対応などから、米軍の軸足は欧州からインド太平洋地域に移っている。

 一方で欧州各国にとって米国の核抑止力や衛星による偵察、通信などの技術は代替が難しく、防衛の米国からの自立と、米国のNATOへのつなぎ留めが最大の課題となっていた。【ハーグ宮川裕章、岡大介】

毎日新聞

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