欧州委員長への不信任決議案を否決 EU欧州議会 求心力低下懸念も
欧州連合(EU)の欧州議会(定数720)は10日、フランスのストラスブールであった本会議で、行政執行機関である欧州委員会トップのフォンデアライエン委員長や全委員に対する不信任決議案を否決した。否決は予想通りだったが、極右やEU懐疑派のみならず左派や環境系の会派からもフォンデアライエン氏の政策運営に不満の声が出ている。現執行部の求心力低下によるEU政局の不安定化を懸念する報道も出ている。
投票結果は賛成175、反対は360、棄権18だった。可決には、投票総数の3分の2以上の賛成などが必要でハードルは高かった。不信任決議案は、EU懐疑派の右派「欧州保守改革(ECR)」所属でルーマニア選出の議員が、欧州委の新型コロナワクチンの契約に関する情報開示が不十分だとして提出。定数の10分の1を超える議員から賛同を得て投票が実現した。
7日の審議で、フォンデアライエン氏は不信任決議を目指す議員を「ロシアの操り人形だ」と非難し、「偽情報で我々の社会を分裂させようとしている」と反発。否決後にはX(ツイッター)に「私たち全員が一緒に共通の課題に取り組む必要がある。ありがとう。ヨーロッパ万歳」と投稿し、団結を呼びかけた。
ただ、欧州議会では2024年6月の総選挙で極右・EU懐疑派が躍進して第3会派を形成するまでに成長し、政策運営は難しさを増している。
欧州委員長の任期は5年。フォンデアライエン氏は中道右派の最大会派「欧州人民党(EPP)」出身で19年に委員長に就き、24年に2期目に入った。しかし、政策の軸足を気候変動対策からウクライナ危機を踏まえた防衛強化などに移す中で、リベラル・左派や環境系の会派からも「気候変動対策を後退させようとしている」と批判を受けることが増えている。
中道左派の「欧州社会民主進歩同盟(S&D)」は一時、決議案を否決せずに棄権することを検討した。フォンデアライエン氏は加盟国への予算配分のあり方を巡り譲歩を迫られた。
不信任決議案の投票に至ったのは14年以来。米ニュースサイトのポリティコは「(不信任決議案の提出は)辞任には追い込めなくても、政治的な打撃を与えるとの脅しに有効なことを示した」と報じ、欧州政治の分断が進む中、今後も不信任決議案の政治利用が続く可能性を指摘した。【ブリュッセル岡大介】
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