米洪水、見過ごされた地元の警鐘 記者質問にいらだつトランプ氏

2025/07/12 16:52 

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 米南部テキサス州で4日未明に起きた大規模な洪水では、少なくとも120人が死亡し、160人以上が行方不明になっている。このうち90人以上が犠牲になったカー郡の現場を11日に訪れると、発生から1週間がたってもなお生々しい爪痕が残っていた。警報システムの不備が被害を拡大させたとの指摘もあり、当局の対応を疑問視する声が上がっている。

 大雨で氾濫したグアダルペ川。強い日差しが照りつける中、河川敷ではボランティアらが大量の倒木の撤去作業に当たり、被災した住宅から住人らが慌ただしくがれきや家具を運び出していた。

 そんな中、母親(75)が1人暮らししていた実家が被災したイベット・カントゥさん(57)はぼうぜんと川を見つめていた。話しかけると、「母は自宅が浸水してきて初めて何が起きているのかを知った。着の身着のままで逃げ出して何とか助かったが、あと数分遅ければ犠牲になっていたかもしれない」と明かした。

 米メディアによると、被害が拡大した要因として警報システムの不備を指摘する声が出ている。ニューヨーク・タイムズ紙は10日、カー郡が2024年に連邦緊急事態管理局(FEMA)に提出した報告書で「1年以内に洪水が発生する可能性が高い」と指摘し、警報システムの導入が解決策になると説明していたと報道。郡は17~24年に少なくとも3回、システムの導入のための資金調達を試みたが、いずれも州に却下されていたという。

 イベットさんは憤る。「近所の複数の子供が亡くなったり、行方不明になったりしている。河川敷は遊歩道のようになっていて、子供たちがいつも遊んでいた。実家に来る度にその光景を見るのが好きだった。連邦政府や州は、なぜこんなことになったのかしっかりと検証すべきだ」

 トランプ大統領は11日、カー郡カービルの現場を視察した。遺族らと面会したほか、救命救急士らとの会合に出席し、「この惨状は信じがたい。こんな光景は見たことがない。米国民の心は打ちひしがれている」と述べた。

 一方で、記者から警報の不備について聞かれると、当局の対応を「全員が素晴らしい仕事をした」と擁護した上で「そんな質問をするのは悪人だけだ。非常に悪意がある」などと主張し、いらだちをあらわにした。【カービル松井聡】

毎日新聞

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