国連の対イラン制裁復活の公算大 安保理が「解除継続」決議案を否決

2025/09/20 16:02 

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 国連安全保障理事会は19日、イランの核開発を巡って、国連の対イラン制裁解除の継続についての決議案を否決した。イランとの核合意の当事国である英国、フランス、ドイツの3カ国との協議で歩み寄りがない限り、9月下旬に国連の対イラン制裁は復活する見通し。

 決議案の採決は、英仏独の3カ国が8月下旬、イランに核合意の履行違反があるとして、制裁の復活措置(スナップバック)を安保理に通知したことを受けた措置。イランとの協力を深めるロシアと中国、パキスタン、アルジェリアの4カ国は、制裁停止の継続に賛成した。英仏など9カ国は反対票を投じ、2カ国は棄権した。

 制裁復活を止めるには、スナップバックの通知から30日以内に「制裁解除の継続」を認める決議を採択する必要がある。9月下旬までに新たな決議が採択されず、イランへの武器禁輸などの国連制裁が復活した場合、イランは国際原子力機関(IAEA)との協力停止など対抗措置をとる可能性がある。

 英国のウッドワード国連大使は19日の会合で、「私たちは来週以降も外交的な協議を続け、(イランとの)相違の解決に取り組む用意がある」と述べ、イラン側に譲歩を迫った。英仏独はイランに対し、IAEAの査察受け入れや、米国を交えた交渉の再開などの条件に応じるよう求めてきた。

 一方、イランのイラバニ国連大使は、核合意を履行していないのは欧米側だと主張した。会合終了後、記者団に「外交の扉は閉ざされていないが、誰と、どのような条件で対話するかは、相手ではなくイランが決定する」と述べた。

 イラン外務省は19日の声明で、決議案否決は「違法かつ正当化できない挑発的な行動であり、外交プロセスを深刻に害する」と反発。英仏独について「独立性を見せず、(反イラン政策を進める)米国の違法な方針に従っている」と非難した。

 核合意は2015年に米英仏独中露とイランとの間で結ばれた。イランの核開発につながる活動を制限する代わりに米欧や国連の制裁を解除した。

 だが18年に第1次トランプ米政権が核合意から一方的に離脱して独自の制裁を復活させたため、イランも対抗措置として合意の上限を上回る高濃縮ウランの製造などを続けてきた。

 英仏独などは合意を維持し、米イラン双方に協議を働きかけてきたが、最近はイランの高濃縮ウラン生産の進展に警戒感を高めていた。米国とイスラエルが今年6月にイラン核施設を攻撃したが、イランの核開発能力がどこまで打撃を受けたかは不透明だ。【ニューヨーク八田浩輔、カイロ金子淳】

毎日新聞

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