ガザ和平交渉「第1段階」 ハマスとイスラエルが合意文書に署名

2025/10/09 22:31 

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 パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルは9日、ハマスが拘束する人質全員を解放し、イスラエル軍がガザの一部地域から撤退することで合意した。

 ロイター通信によると、エジプトで9日午前、双方が合意文書に署名した。イスラエルが9日夕(日本時間10日未明)に閣議で承認した後、24時間以内に停戦が発効する。ガザの戦闘は発生から2年を迎え、全面的な戦闘終結に向けて初めて一歩踏み出した形だ。

 ガザで戦闘が止まるのは、1~3月の一時停戦以来、約7カ月ぶり。ただ、ハマスの武装解除や戦後統治などを巡って双方に隔たりも残る。合意が順守され、今後の交渉で妥協点を見いだせるかが焦点となる。

 合意の発表に先立ち、トランプ米大統領は8日、ホワイトハウスで記者団に対し、「おそらく日曜(12日)か土曜(11日)」にエジプトを訪問する可能性に言及。ガザの視察に関しても排除しなかった。

 また、米ニュースサイト「アクシオス」に対し、イスラエルを訪問し、議会で演説したい意向も明かした。ホワイトハウスのレビット報道官によると、トランプ氏は10日に定期的な健康診断を受診した後に、中東を訪問することを検討しているという。

 ハマスは声明で、交渉を仲介したトランプ氏やアラブ諸国などに謝意を示したうえで、イスラエルが合意内容を守ることを保証するよう要請した。イスラエルのネタニヤフ首相はX(ツイッター)に「イスラエルにとって素晴らしい日だ」と投稿。イスラエル軍は停戦発効に先立ち、部分的な撤退や人質の受け入れ準備を始めた。

 和平案では、「第1段階」としてハマスが拘束している人質48人を引き渡し、イスラエルも収監、拘束中のパレスチナ人1900人超を釈放。イスラエル軍は段階的にガザから撤退し、ガザの人道支援物資の搬入も拡大させる。イスラエルメディアなどによると、人質解放を終えても軍が戦闘を再開しないことを米国とカタールが保証するという。人質解放は早ければ12日にも始まる。

 和平案にはハマスの軍事インフラを破壊し、ガザを「非軍事化」する一方、イスラエルがガザの併合や占領をしないことも明記されている。詳細は今後の交渉で決まる見込みだが、ハマスは武装解除に難色を示しており、交渉が長期化する可能性もある。

 ガザ情勢を巡っては、トランプ政権が9月、戦闘終結と戦後統治に関する20項目の和平案を提示し、イスラエル、ハマスともに支持を表明。仲介を担うカタールやエジプトなども歓迎する意向を示し、10月6日から合意内容の詳細について交渉が進められていた。

 ガザの戦闘は2023年10月、ハマスがイスラエルに越境し、民間人ら約1200人を殺害、251人を人質として拉致したのをきっかけに始まった。これまでに23年11~12月と今年1~3月に一時停戦があり、人質の一部が解放された。ガザの保健当局によると、ガザでは6万7000人以上が死亡、約17万人が負傷した。食料不足などによる人道危機も深刻化している。【カイロ金子淳、ワシントン松井聡、エルサレム松岡大地】

毎日新聞

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