マクロン仏大統領、4日前辞任の前首相を再任命 混乱続く可能性も

2025/10/11 17:38 

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 フランスのマクロン大統領は10日、2026年度予算案などを巡る野党との対立で6日に辞任したルコルニュ前首相を、首相に再任命した。マクロン氏は中道左派・社会党に年金改革などで妥協案を示したが、社会党は不満を表明しており、政治の混乱が続く可能性がある。

 マクロン氏は10日、極右「国民連合」(RN)、急進左派「不服従のフランス」を除く主要政党の幹部をエリゼ宮(大統領府)に招いて会談し、予算案など主要政策に理解を求めた後、ルコルニュ氏の再任命を発表した。

 ルコルニュ氏は首相再任命後、X(ツイッター)に「私は、全力で年末までに予算を成立させ、国民の日常生活の問題に対応するという、大統領から託された任務を受け入れる。この政治危機に終止符を打たなければならない」と投稿し、意欲を示した。また「財政健全化は引き続き優先課題であり、この必要性を回避することはできない」と緊縮策への理解をあらためて野党に要請した。

 ルコルニュ氏はマクロン氏の求めを受け、7~8日に野党幹部と面会し、一定程度の理解を得たとの感触を述べていた。だが、政治の混乱は当面、続きそうだ。

 マクロン氏との10日の会談後、記者団の取材に応じた社会党幹部によると、マクロン氏は、社会党が反対してきた年金改革法の施行を中止し、27年大統領選以降に遅らせる修正案を提示するなど歩み寄りを見せたという。

 だが社会党のフォール第1書記はマクロン氏の妥協案について「まだ十分ではない」としたうえで、「我々は国民議会(下院)の解散、総選挙を望んではいないが、また恐れてもいない」と述べ、与党側の予算案に引き続き反対する可能性を示唆した。

 一方、解散・総選挙を求めるRNのバルデラ党首はXに「かつてなく孤立し、現実離れしたマクロン氏によるルコルニュ氏の任命は、悪い冗談であり、民主主義の恥、フランス国民への侮辱だ」と投稿し、強く反発した。

 仏下院は24年の総選挙でどの主要勢力も過半数に達せず、不安定な状態が続いている。各種世論調査の結果によると、現在、解散・総選挙が実施されても過半数を獲得できる勢力はなく、RNが最も議席数を伸ばす公算が大きい。

 フランスの財政は悪化しており、政府債務は国内総生産(GDP)比114%と、欧州連合(EU)加盟国でギリシャ、イタリアに次ぐ水準となっている。与党の中道政党は約440億ユーロ(約7兆8000億円)の支出削減策を盛り込んだ緊縮予算案を9月に提示したが、野党が反発し、バイル元首相、ルコルニュ氏が相次いで辞任する異例の事態となった。【ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

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