仏ルコルニュ新内閣、予算修正案を提案 年金改革中止、富裕層に増税

2025/10/15 10:22 

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 フランスのルコルニュ内閣は14日、与野党間で対立が続いた2026年度予算案の修正案を仏国民議会(下院)に提案した。マクロン大統領の目玉政策の一つだった年金受給開始年齢の引き上げを中止する一方、富裕層への増税などで財源を確保する内容で、中道左派・社会党に配慮した。これを受け、社会党は極右「国民連合」(RN)などが準備する内閣不信任案を支持しない意向を示し、当面の政治危機は回避された。

 ルコルニュ氏は国民議会での演説で、年金受給開始年齢を62歳から64歳まで段階的に引き上げる年金改革法の適用を、27年の大統領選後まで中止する方針を明らかにした。

 ルコルニュ氏によると、年金改革の停止で26年に約4億ユーロ(約700億円)、27年に18億ユーロの追加費用がかかる。一方、健康保険支出や家族手当の抑制などの歳出削減で170億ユーロ、最富裕層4000世帯を対象とする資産への課税や、幅広い所得層への税控除の一部廃止、脱税対策の強化などで140億ユーロを捻出する。現在、国内総生産(GDP)比5・4%の財政赤字を26年に4・7%まで縮小させる目標を立てている。

 フランスの政府債務はGDPの114%に上り、財政赤字の削減が急務となっている。だが緊縮型の予算案に社会党などが反対し、バイル内閣、ルコルニュ内閣が相次いで総辞職する事態となった。ルコルニュ氏は首相に再任命され、新内閣で年金改革の中止や富裕層への課税強化など社会党の求める政策を一部取り入れ、妥協を図った。

 予算案を巡っては、RNと急進左派「不服従のフランス」が反発しており、16日にも国民議会で内閣不信任案を提出する。だが、修正案を受け、社会党のフォール第1書記は14日夜、仏テレビで「今すぐに内閣不信任案を支持する考えはない」と述べ、社会党議員に内閣支持を呼び掛けた。また中道右派・共和党も内閣支持の意向を示しており、不信任案は否決される見通しとなった。

 今後は予算の細部や他の重要政策に焦点が移るが、与野党の対立が強まる可能性は残る。極右、中道、左派のいずれの勢力も過半数に達しない不安定な状況の中、ルコルニュ内閣は引き続き、綱渡りの議会運営を迫られる。【ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

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