ロシア軍支援の北朝鮮兵、半数近い7000人が死傷か NATO推計

2025/12/08 09:30 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ウクライナに侵攻するロシア軍を支援する北朝鮮軍の死傷者が約7000人に達していることが、北大西洋条約機構(NATO)の推計で分かった。北朝鮮軍は現在、ウクライナが越境攻撃したロシア西部クルスク州に最大約1万3000人の部隊を展開し、露軍によるウクライナ軍への攻撃などを支援している。一方、ロシアは北朝鮮への兵器の技術移転を進めるなど関係を深めている。

 ◇さらに数万人追加派兵の計画も

 NATOによると、北朝鮮は2024年秋以降に約1万人、25年9月以降に約5000人の兵士をロシアに派遣し、その半数近い約7000人が死傷したとみられる。現在はクルスク州に8500~1万3000人が駐留し、ウクライナ軍の攻撃に対する防衛や、地雷除去、ウクライナへの攻撃の支援などに従事している。さらに数万人規模の追加派兵の計画があるという。

 北朝鮮部隊については、「露軍に貢献するより、足手まといになることが多い」(NATO高官)との見方もある一方、「戦地の環境に急速に適応している」(ウクライナ軍)との評価もある。北朝鮮部隊がクルスク州で防衛を担うことで、露軍はウクライナ東部での戦闘に、より集中できるメリットがあるとみられる。

 ウクライナ軍によると、クルスクに駐留する北朝鮮部隊のドローン(無人航空機)操縦士は10月、露軍によるウクライナ北東部スムイ州への攻撃の支援に参加した。北朝鮮軍がウクライナ領内への攻撃に参加したのは初めてという。

 ◇軍事・経済関係深まる

 北朝鮮は、露軍への武器供給面での存在感も増している。韓国の情報当局は7月、北朝鮮が既に1200万発以上の弾薬をロシアに供給したと見積もった。ウクライナ軍は露軍の弾薬の約半数が北朝鮮から供給されているとみている。NATOによると、170ミリ自走砲や240ミリロケット砲など、北朝鮮からロシアへの兵器供給も「安定的に継続している」という。露軍がドローンに北朝鮮製のクラスター爆弾を積載するなど兵器の統合を進めているとの報道もある。

 一方、北朝鮮軍はドローンや最新兵器による実戦経験を積み、作戦遂行能力が上がっている。また兵力や弾薬、兵器の供給の見返りに、ロシアからミサイルなどに関する技術移転を受けているとみられる。北朝鮮製ミサイルの命中精度が上がっているとのウクライナ軍の証言もある。今後、北朝鮮の弾道ミサイル技術などが向上すれば、韓国や日本などへの脅威となる。

 北朝鮮は、ロシアとの経済関係も深めている。NATOによると、北朝鮮はロシアの労働力不足を埋めるため、既に1万7000人以上の労働者を派遣しており、さらに建設作業員など2万~3万人の追加派遣を計画している。英BBCなどによると、ロシアは24年、国連制裁による上限を上回る100万バレル以上の原油を北朝鮮に輸出している。【ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

国際

国際一覧>

写真ニュース