ウクライナ巡り「根本原因」の解消求めるプーチン氏 譲らぬ姿勢固持
ロシアのウクライナ侵攻を巡り、和平を目指すトランプ米政権の仲介外交が続く。ただ、プーチン露大統領は領土などに関して譲歩しない姿勢を改めて示しており、交渉の進展は容易ではないとみられる。
「昨年6月に私が説明した原則に基づき、この危機の根本原因を除去することで、平和的に紛争を終わらせる用意がある」。プーチン氏は、今年を総括する19日の大規模記者会見で、ウクライナ和平に関してこう訴えた。
昨年6月にプーチン氏が示した原則とは▽ウクライナの「中立化」「非軍事化」「非ナチ化」▽ウクライナ東・南部4州からのウクライナ軍の完全撤退▽4州とクリミア半島を「ロシア領」と承認すること▽ウクライナにおける露語話者の権利の保障▽西側諸国による対露制裁の全面解除――といった内容だ。これらを和平交渉の条件としている。
ウクライナの「中立化」は、北大西洋条約機構(NATO)への非加盟などを含意し、「非軍事化」は兵力削減を意味する。また、露側はウクライナのゼレンスキー政権を繰り返し「ネオナチだ」と非難しており、「非ナチ化」という言葉には、政権交代の要求や親露的な政権樹立を目指す意図が込められている。
ロシアは2014年2月のウクライナでの政変後、クリミアの一方的編入や、東部ドネツク・ルハンスク両州での紛争への介入を続けてきた。非正規戦闘部隊や水面下での軍の投入など「ハイブリッド戦争」と呼ばれる形での事実上の侵攻と言える。
22年2月の全面侵攻後は、露南部からクリミアまでを地続きの支配圏とするため、ドネツク州南部マリウポリなどの都市を徹底的に攻撃し、露語話者中心の住民に多くの犠牲者を出している。
このため、「露語話者の権利の保障」というウクライナへの要求は、非常に矛盾したものといえる。
プーチン氏が繰り返し主張する「危機の根本原因の除去」とは、ウクライナをロシアの従属国に変えることや、欧州大陸の安全保障環境をロシア有利に改変することに他ならない。ウクライナや欧州主要国にとっては受け入れがたい内容だ。
プーチン氏は19日の会見では、米NBCニュースの記者の質問に答える形で「我々は(ウクライナでの)人々の死について責任があるとは考えていない。なぜなら、我々がこの戦争を始めたわけではないからだ」と強弁した。
さらに「(交渉の)ボールはキエフ政権の首謀者やその欧州の支援者たちに委ねられている」とも述べ、相手側に譲歩を迫った。露側としては、外交面でトランプ政権の取り込みを図りつつ、前線での進軍も続ける考えとみられる。
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