台湾のパンダは「返さなくていい」理由 複雑な中台関係、繁殖には壁

2026/01/25 14:22 

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 東京・上野動物園から中国に帰るジャイアントパンダとの別れを惜しむ声が絶えない。世界各国の動物園のパンダのほとんどは中国から貸与されたもので、いつかは返還しなくてはならない。だが台湾で暮らす3頭は「例外」扱いだ。その背景には、複雑な中台関係がある。

 台北市南部の山裾に広がる市立動物園のパンダ館。竹を抱えてむしゃむしゃと食べるパンダの姿に、遠足で訪れた小学生らから歓声が上がった。

 ここに暮らすのは「円円(ユエンユエン)」(雌、21歳)とその子どもで2013年生まれの「円仔(ユエンザイ)」、20年生まれの「円宝(ユエンバオ)」の姉妹。母娘パンダは動物園のマスコットの一つだ。

 30分かけて動画撮影を楽しんでいた台湾人女性(27)は「ずっといてくれるので、ゆっくり見られます」。日本から訪れるファンも増えているという。

 円円が、ペアだった「団団(トゥアントゥアン)」(22年に病死)と一緒に中国・四川省から台湾に渡ってきたのは08年12月。5月に発足した国民党・馬英九政権は対中融和を掲げ、交流拡大にかじを切っていた。2頭の名前は「団円」(離れた家族が一緒になる)という中国語にちなむ。

 ◇中台関係に影響?パンダの存在

 1980年代以降、絶滅が危惧されたパンダの国際商取引が禁止され、中国は外国に対して贈与ではなく繁殖研究を目的に貸与するようになった。一方、台湾は中国からすれば「国内」であるため贈与は問題にならない。「中華民族の宝」を通じて同胞意識を高める狙いもある。

 ただ、馬政権にとって「台湾は中華人民共和国の一部」との主張は受け入れられなかった。結局、台湾の希少な鹿と交換する形にし、パンダの移動に必要な書類も「国内」か「国際」かあいまいな記述となった。

 つがいの2頭は台湾市民から大歓迎を受ける一方、当初は中国を警戒する人たちからの反発もあった。

 当時の園長、葉傑生さん(70)によると、「パンダに危害を加える」と脅す電話や、毒入りのリンゴが投げ込まれるという情報もあり、警察に警備を依頼したこともあった。パンダに何かあれば中台関係にも影響しかねず、葉さんは「責任の重さで気の休まる時がなかった」と振り返る。

 目下の焦点は子どもたちのペア探しを含めた繁殖だ。動物園によると雌は10歳前後が最適とされ、中国が主導する国際委員会が繁殖計画を進める。

 だが12歳の円仔にはまだ相手が見つかっていない。パンダ館長の王建博さん(43)によると遺伝上の価値が重視される繁殖の順番がなかなか来ないという。

 緊張が続く中台関係が影響している可能性もある。台湾の独自性を重視し16年から政権を担う民進党に対し、中国の習近平最高指導部は対話を拒否している。パンダの交配には中国から雄を迎える方法や凍結精液を使う方法があるが、いずれも政治的な壁は高そうだ。【台北・林哲平】

毎日新聞

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