冷え込む米欧関係 派兵巡るトランプ氏の「侮辱」で火に油

2026/01/28 17:10 

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 北大西洋条約機構(NATO)の主要な加盟国同士である米国と英独仏などとの関係が冷え込んでいる。2001年の米同時多発テロ後、アフガニスタンに米国とともに派兵した欧州などの同盟国に対し、トランプ米大統領が侮辱とも受け取れる発言をしたためだ。欧米関係はトランプ氏のデンマーク自治領グリーンランドへの領有意欲や追加関税の表明などですでにこじれており、NATOのルッテ事務総長が事態収拾に奔走している。

 ◇トランプ氏発言、英国王も不快感

 発端は、22日の米FOXビジネスのインタビューでのトランプ氏の発言だ。トランプ氏はアフガニスタンに派遣された米軍以外のNATO部隊について「われわれが彼らを必要としたことはないし、彼らに何かを求めたことも一度もない」と述べた。さらに「彼らは部隊を派遣したというだろうが、前線から少し離れた後方にいた」と一方的な見解を語った。

 これに対し、派兵で多数の戦死者を出した英独仏などの加盟国は猛反発している。

 スターマー英首相は23日、「457人の英兵がアフガンで命を落とした」と反論。トランプ氏の発言を「侮辱的だ」と非難した。英国の複数のメディアは、チャールズ英国王も、トランプ氏の発言に不快感を示したと報じている。

 アフガンに兵士を派遣し、59人の死者を出したドイツのピストリウス国防相も25日、独テレビでトランプ氏の発言について「単純に事実誤認で、同盟国の死者をあのように語るのは失礼だ」と述べ、米国に謝罪を求めた。

 アフガンで90人の兵士が死亡したフランスのリュフォ軍担当相は26日、海外で戦死した仏軍兵士のためのパリの慰霊碑を訪れて献花した。

 リュフォ氏は記者団に、献花がトランプ氏の発言後に計画されたことを明かし、「兵士の記憶に対する侮辱は受け入れられない。このような時こそ、前線で命をささげた兵士や遺族のためにここに来ることが重要だ」と述べた。フランスでは退役軍人から怒りの声が噴出しているという。

 米欧間の溝が深まる中、間に挟まれた形のNATOのルッテ氏は沈静化を試みている。ルッテ氏は26日の欧州議会で、アフガンでの米国以外のNATO加盟国の犠牲についてトランプ氏に説明したと強調。「米国はその献身を高く評価している」と述べた。米国との関係悪化が、米国を除いた欧州軍創設の議論の高まりにつながることを警戒し、「米国抜きで欧州防衛はできない」と訴えた。

 トランプ氏は24日、自身が運営するソーシャルメディアに「英国の偉大で勇敢な兵士たちは、常に米国とともにある。アフガンでは457人が戦死し、多くの兵士が重傷を負った。この絆は決して壊れることはない」と投稿したが、自身の発言には触れず、公式の謝罪もしていない。

 トランプ氏の今回のNATO同盟国への発言は、トランプ氏が米国のグリーンランド領有に反対する英仏独など欧州8カ国へ追加関税の導入(後に撤回)を予告し、欧米関係がこじれる中で火に油を注いだ。

 マクロン仏大統領は20日、追加関税で同盟国を脅すトランプ氏の手法について「強者が押しつける論理を受け入れるわけにはいかない。私たちは、いじめるよりも敬うことを重んじ、蛮行より法の支配を好む」とトランプ氏を痛烈に批判していた。【ブリュッセル宮川裕章】

毎日新聞

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