石破政権、初の通常国会 課題山積、続く「綱渡り」 注目のテーマは

2025/01/24 18:38 

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 石破茂政権として初めて臨む通常国会が24日召集された。少数与党となった政権でこの国会を乗り切るためには、2025年度当初予算案審議だけでなく政治改革や選択的夫婦別姓制度、年金制度改革などでも野党との合意形成が欠かせない。課題は山積しており「綱渡り」の国会運営が続きそうだ。

 「少数与党だ。衆院では野党の賛同がなければ法案1本、条約1本通すことはできない。野党に賛成いただくためにも、全力を尽くしたい」。首相は施政方針演説に先立つ自民党の会合でそう述べた。

 昨年の国会で最大のテーマだった「政治とカネ」は引き続き、与野党対決の主戦場となりそうだ。自民党派閥裏金事件の実態解明に向け、立憲民主党などの野党は旧安倍派の元会計責任者を衆院予算委員会に参考人招致するよう繰り返し要求。招致の議決を予算案審議入りの前提条件としている。自民、公明両党は招致に応じない姿勢で与野党協議に臨んでおり、予算委員長の安住淳氏(立憲)がどのような判断を下すかに注目が集まる。

 政治改革を巡っては、企業・団体献金のあり方が積み残しとなっている。先の臨時国会では使途公開が不要な「政策活動費」の全面廃止を盛り込んだ政治改革関連法が成立したが、企業・団体献金は見直されず、立憲などが提出した企業・団体献金禁止法案について「年度末までに結論を得る」ことで合意していた。

 「禁止より公開」を掲げる自民は禁止法案の対案として、企業・団体献金の透明性向上策などを盛り込んだ独自の政治資金規正法改正案を通常国会に提出する方針だ。「禁止」か「公開」かを巡る議論は紛糾が予想される。

 選択的夫婦別姓制度は1996年に法相の諮問機関・法制審議会が導入を答申してから四半世紀以上、議論が進んでこなかったが、少数与党の政治状況を背景に法整備が実現する可能性が出てきた。自民は24日に党内協議を開始。公明も来週にも党内協議に入る予定で、石破首相は「できるだけ早い時期に自民党の案をまとめ、(公明と)与党としての案の協議に入りたい」との意向を示している。

 ただ、自民党内は慎重派と賛成派に割れている。党内には関連法案の採決時に党議拘束を外すべきだとの意見もあるが、森山裕幹事長は24日、記者団に「国民政党である自民党が党議拘束をかけないで結論を見いだすのはできるだけ避けるべきだ」と述べた。

 サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の実現を目指す法案にも注目が集まる。有害なサーバーにアクセスし無害化する権限を警察と自衛隊に付与する内容で、憲法が保障する「通信の秘密」に配慮するため新設の独立機関の事前承認を原則とする。能動的サイバー防御については国民民主党が早期立法を求めてきたほか、立憲や日本維新の会も必要性を認めており、対決法案にはならなさそうだ。ただ、憲法にも関わることから「すんなり通るものでもない」(自民幹部)との見方が強い。

 年金制度改革も大きなテーマだ。厚生労働省は、厚生年金の積立金を基礎年金(国民年金)の給付に振り分けて基礎年金を底上げする案の実施判断を29年以降に先送りする方向だが、国民生活に深く関わるだけに与野党で活発な議論が交わされそうだ。高所得者の厚生年金保険料を引き上げるための法案審議も予定されており、野党からは「ますます年金制度に対する不信感を招くことになるのではないか」(国民民主の古川元久代表代行)などの懸念の声が上がっている。

 年金制度を巡っては、立憲の野田佳彦代表が内閣不信任決議案を提出するかどうかの判断材料の一つにする意向を示しており、審議の行方が今後の政治情勢に大きな影響を及ぼす可能性がある。【森口沙織、池田直、内田帆ノ佳】

毎日新聞

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