5選確実の山形知事・吉村氏 長期県政、オール与党化でどうなる?
26日投開票された山形県知事選は、現職の吉村美栄子氏(73)が女性知事で最多となる5選を確実にした。元々は民間企業出身で、2009年に知事に初当選するまで政治経験がなく、総務省など中央省庁の官僚出身者が過半数を占める現職知事の中でも異色の経歴で知られる。
吉村氏を知る多くの人は、知事として県産品の「トップセールス」に汗をかくイメージが真っ先に思い浮かぶのではないだろうか。
例えば、毎年のように県産ブランド米「つや姫」の田植えをするのが恒例となっている。JR山形駅の新幹線ホームには「さくらんぼ県へようこそ」と利用客を出迎える吉村氏の等身大パネルも設置される。
また大消費地・東京にも頻繁に足を運び、親しみを込めて積極的に県産品をPRする。こうした姿が結果として、自身の知名度向上にもつながる。2回の無投票当選も含め、吉村氏が知事選で強さを発揮した背景の一つと言えるだろう。
県政運営では特定の業界団体から強く支援を受けない姿勢を長年、貫いてきたとされる。今回の知事選でも吉村氏は今までの選挙と同じく「県民党」を掲げた。
一方、今回の知事選はこれまでとは異なる経過をたどった。かつて県議会で副知事人事などの議案を否決や撤回に追い込むなど、知事野党として対立してきた自民党が、今回の知事選では吉村氏の要請を受けて支援に回ったのがその一つだ。
総務省などによると、4期以上の現職知事は近年では12年に2人しかいなかった時期もあるが、現在では14人に上るなど多選が目立つ傾向にある。また5選以上の現職知事は今回当選した吉村氏を含め、わずか6人に限られる。
5期目の長期県政に入る吉村氏を取り巻くオール与党体制。山形県の政治状況に詳しい山形大人文社会科学部の芦谷圭祐講師(政治学)は、地方自治の基本である二元代表制に「なれ合い」が生じる恐れがあると指摘し、「緊張感を欠いてしまうことがないか、注視していきたい」と話す。【長南里香】
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