「ドラマを演出、かつ主演」 横審満場一致で豊昇龍を横綱に推薦
日本相撲協会の諮問機関、横綱審議委員会(横審)は27日、東京・両国国技館で会合を開き、大相撲初場所で2回目の優勝を果たした大関・豊昇龍(25)=本名・スガラグチャー・ビャンバスレン、モンゴル出身、立浪部屋=を横綱に推薦することを満場一致で決めた。29日に開催される協会の臨時理事会と春場所(3月9日初日・エディオンアリーナ大阪)番付編成会議を経て、第74代横綱・豊昇龍が正式に誕生する。
横審には山内昌之委員長(東大名誉教授)を含めて委員9人全員が出席し、会合は10分足らずで終了した。
記者会見した山内委員長は、千秋楽相星決戦で優勝を逃した昨年11月の九州場所、2回目の優勝を飾った今回の初場所の成績が「『大関で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績』とする(横審の横綱推薦の)内規に合致している」と説明した。
今場所の、平幕相手に星を落として12勝3敗との成績に対しては「実際には(優勝決定の)ともえ戦を通して17回戦い、その試練に勝った。3敗の意味が希釈化(薄められた)した」。ともえ戦で2連勝しての逆転優勝を「最後の最後に印象的な勝ち方をした。ドラマを演出し、かつ主演になった。興行として角界を担っていく横綱としてふさわしい。(勝ち)星以上の力が左右した」と評価した。
豊昇龍が今場所後に昇進を逃せば、春場所は32年ぶりに横綱が空位になる可能性があった。これについて、山内委員長は「結果としてそう(空位に)ならなくてよかった。私たちが『(昇進を)実現しよう』とかという人知を超えたものがある」と述べた。
昇進に大きな異論は出なかったが、委員からは品格をこれまで以上に備えることを求める意見も出たという。
豊昇龍は横綱昇進の推薦を受け、東京都台東区の部屋で記者会見し、「誰かのまねをするのではなく、『これが僕なんだ』というところを見せたい。人より2倍、3倍の稽古(けいこ)をしてこの地位を守っていきたい」と語った。【岩壁峻、高野裕士】
豊昇龍の横綱推薦を満場一致で決めた横綱審議委員会の各委員のコメントは次の通り。
◇都倉俊一委員(作曲家)
日本の精神を大切にしながら国技であることを自覚してくれれば。本当にまだまだ伸びしろがある。いい意味で精神的に安定した横綱になってほしい。
◇丹呉泰健委員(元財務事務次官)
今場所も前に出ていた。攻めていた。3敗した時はダメだと思ったが、そこからよく頑張ってくれた。横綱になってからも精進して、立派な横綱になってもらいたい。本当に良かった。
◇大島宇一郎(中日新聞社社長)
この2場所の成績は昇進(条件)を十分満たす成績だった。3敗した後も気力を絶やさず充実した相撲を見せてくれた。横綱になったからには場所全体をリードする横綱になってほしい。
◇池坊保子委員(元副文部科学相)
3敗した時に心配しましたけど、その後よく取り戻した。その精神力は素晴らしい。彼は勉強しようという意欲があるから横綱にふさわしい品格も兼ね備えていくと思います。
◇紺野美沙子委員(俳優)
ともえ戦を見て、「これは横綱にふさわしい」と。朝青龍のような圧倒的な力と千代の富士のようなスピード相撲、歴代の横綱のいいところをとった「令和のカッコイイ横綱」になってほしいです。
◇大島理森委員(元衆院議長)
内規を満たしていることが一つ。そして3敗した後にそれを乗り越えた気迫、相撲の中身が立派でした。今後は品格のさらなる高まりを期待したい。(相撲でも)さらに横綱としての高みへ向かうことを期待している。
◇上原茂委員(大正製薬社長)
千秋楽の結びとともえ戦の3番は「横綱相撲だな」というのが率直な感想。横綱は日本の文化を守っていく役割がある。品格を大事にして相撲道に励んでほしい。日本人の期待する横綱像を目指してほしい。
◇鹿島茂委員(フランス文学者)
この2場所、非常に精神と体力が充実していた。まだ若いから強い横綱を期待したい。今場所はよく持ち直した。逆境をはね返す力がある。品格について注文されている方もいました。
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