高校無償化で公私のバランス崩れる? 先行自治体は公立の定員割れ増

2025/02/18 19:10 

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 高校授業料無償化は、公立と私立のバランスを崩すことになるかもしれない。

 「私立の進学希望者が増え、公立の進学希望者が減少する可能性がある」。阿部俊子文部科学相は18日の閣議後記者会見で、私立も含む高校授業料実質無償化の影響を問われ、こう答えた。施設の充実ぶりや教育内容の多様性において多くの私立が公立に比べて優位に立っていることが懸念の背景にある。

 現行の高校授業料に対する支援制度は、世帯年収が910万円未満の世帯に対しては子どもの通学先が公立か私立かを問わず公立授業料相当の年11万8800円を支給。子どもが私立に通う年収590万円未満の世帯に対しては年39万6000円を上限に支給している。与野党間の調整を踏まえて石破茂首相が言及した案は、所得制限を撤廃した上で私立生への支給額上限を年45万7000円程度に引き上げるというものだ。

 公立への影響については、先行して実質無償化を導入した自治体で既に表れている。大阪府では2024年春、公立全日制の約半数が定員割れ。24年度から実質無償化した東京都では25年春入学の入試(全日制普通科)で、定員割れした課やコースがある学校数が31校となり、前年度の14校から倍以上に増えた。都教委は「無償化の影響もあるかもしれないが、原因を絞り込むことはできない」としている。

 定員割れは学校の統廃合の議論につながりかねず、文科省内には「少子化が進む中で避けられない部分はあるものの、急激に大きな定員割れが起きれば習熟度に応じた学習や部活動ができなくなるなど、教育内容にも影響が及ぶ」との見方がある。無償化が教育の質の確保につながらないのではないか、という指摘だ。

 無償化を巡ってはこのほか、富裕層の家計負担を国が肩代わりすることになり、教育格差が拡大しかねないという危惧もある。数千億円と見込まれる財源を確保できるかどうかも不透明だ。

 誰もが納得できる制度を構築するのは困難な状況になりつつある。文科省幹部も「議論の進捗(しんちょく)を見守るとしか言えない」と口が重い。【斎藤文太郎】

毎日新聞

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