中国、抗日式典とSCOサミット同時期開催か 露首脳らの支持誇示?

2025/02/20 19:17 

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 中国の習近平指導部が今年8月下旬~9月上旬、「抗日戦争勝利80年」の記念式典と新興・途上国の多国間枠組み「上海協力機構(SCO)」の首脳会議(サミット)を、同時期に近接地で開催する案を検討していることが分かった。関係国首脳の多くが両方に参加できるようにして新興・途上国からの支持を誇示。対立が激化する米国への対抗姿勢を内外に示す狙いがあるとみられる。

 「抗日戦争勝利80年」の記念式典は北京市で9月3日に開かれる予定だが、中国が今年の議長国を務めるSCOのサミットもこれに前後して開催される見通しだ。関係者によるとサミット会場候補として、北京市に隣接し首脳らの移動がしやすい天津市が有力になっているという。

 そもそも二つのイベントをけん引するのは中国とロシアだ。今年は第二次世界大戦の終結から80年にあたり、中露は共に「戦勝80年」の節目として重視している。タス通信によると、ロシアのラブロフ外相は19日の下院での演説で、プーチン氏が8月下旬から9月上旬にかけて「抗日戦勝80年」式典に出席するため訪中すると明らかにした。

 それに先立つ5月9日には、習国家主席がモスクワで行われる「対ドイツ戦勝80年」の式典に参加する予定。米国の覇権に対抗する中露の結束を示す舞台になるとみられる。

 一方、SCOは、中露が主導し、中央アジア諸国やイラン、インドなど計10カ国が参加する枠組み。習氏とプーチン氏は例年、首脳会議に出席している。

 中国にとっては、主要新興国による「BRICS」と共に、国際社会で多数派を形成するための土台となっている。日米欧の主要7カ国(G7)の対抗軸として新興・途上国を結集し、「脱ドル体制」など米国中心の国際システムの見直しを迫っている。ロシア通信は、SCO幹部が「首脳会議は8月下旬から9月上旬に中国で開かれる」と明かしたと報じた。

 習指導部としては、「抗日戦勝80年」式典とSCOサミットをまとめて開催することで、中露が新興・途上国の支持を得て、新たな秩序の構築に乗り出す姿を打ち出すことを狙っているとみられる。

 米国のトランプ政権は対外援助の「凍結」を一方的に発表するなど国際協調に背を向ける振る舞いが目立っており、習指導部は、新興・途上国に広がる米国への不満を糾合し、自国の求心力を高める好機と捉えている模様だ。

 また、プーチン氏のように両方のイベントに参加する予定の首脳がいるため、「年内に2度の首脳訪中を調整するのは、容易ではないという現実的な判断があるのではないか」(北京の外交筋)との見方もある。

 10年前の2015年9月に開かれた「抗日戦勝70年」の記念式典は、北京の天安門広場で開かれ、軍事パレードも実施した。プーチン氏や韓国の朴槿恵(パククネ)大統領(当時)のほか、BRICSやSCOに名を連ねる新興・途上国の要人も多数参加した。【北京・河津啓介】

毎日新聞

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