石破首相、ベトナム首相と会談 自由貿易体制の強化で一致

2025/04/28 13:20 

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 ベトナムを訪問中の石破茂首相は28日、ファム・ミン・チン首相とハノイの首相府で会談した。会談後、発表した成果文書によると、トランプ米政権による関税措置を踏まえ、多角的自由貿易体制の維持・強化に寄与していくことで一致。同志国の軍に防衛装備品などを無償提供する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」について、ベトナム側に具体的なニーズがあれば日本側は積極的に対応すると明記した。

 両氏は外務・防衛当局による次官級協議を創設し、年内に初会合を開くことでも合意。ベトナムの海上保安能力強化に向けた協力も進めるとした。両国の安全保障面での連携強化は、南シナ海への進出を強める中国をけん制する狙いがあるとみられる。

 チン氏は会談で「複雑な国際情勢の中、日本は最重要かつ長期的なパートナーだ。地域の平和と安定の維持に貢献してほしい」と日本のリーダーシップへの期待を表明。石破首相は、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、ベトナムは要だと指摘。両氏は南シナ海や東シナ海の情勢について意見を交わし、緊密に連携していくことで一致した。

 石破首相は会談後の共同記者発表で、「地政学的要衝に位置するベトナムとの関係を強化することは、地域の安定と繁栄に資するものだ」と強調した。チン氏は「多角化主義を重視し、国際協力を呼びかけることの重要性を確認した。この精神のもと、双方は経済連携を強化し、互いの発展を支援するための最大限の便宜を図る」と述べた。

 成果文書では他に、半導体や人工知能、DX(デジタルトランスフォーメーション)、防災などの分野での協力を検討することで一致。2024年に在日ベトナム人が60万人を突破し、日本への訪問者・観光客が62万人を記録したことを評価し、双方の年間往来観光客数200万人突破を念頭に更なる環境整備に取り組むことも確認した。

 石破首相はこれに先立つ27日、ベトナム最高指導者のトー・ラム共産党書記長と約1時間10分にわたって会談した。両氏は、米国の関税措置やそれに対抗する中国の報復措置が世界経済に与える影響を踏まえて議論し、石破首相は「自由で開かれた国際秩序や多角的自由貿易体制を維持・強化するため協力していきたい」と述べた。

 首相は29日にフィリピンを訪れマルコス大統領と会談する。30日に帰国する予定。【ハノイ光田宗義】

 ◇日ベトナム首脳会談のポイント

・トランプ米政権の関税措置を踏まえ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序と多角的自由貿易体制の強化で一致

・中国の海洋進出を念頭に、ベトナムの海上保安能力強化に向けた協力を確認

・両国の外務・防衛当局による次官級協議を創設し、年内に日本で初会合開催

・日本が防衛装備品を供与する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」も検討

毎日新聞

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