<ファクトチェック>「日本にいない外国人からは相続税取れない」は誤り 神谷氏が発言

2025/07/12 13:00 

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 外国人による不動産購入を巡り、参政党の神谷宗幣代表が6日のフジテレビの報道番組で、日本に住んでいない外国人からは相続税を徴収できない趣旨の発言をした。国税庁への取材によると、この発言は誤りだ。【畠山嵩】

 番組には与野党8党の党首が出席し、司会者が「外国人による不動産購入を巡って諸外国のような規制が日本にも必要か、不要か」と質問した。

 神谷氏は必要とした上で「日本には相続税というものがあるんですけど、オーストラリアとか中国とかですね、相続税ないからですね、彼らは買っておいて日本に住んでなければ、我々相続税取りようがないんですね」と述べた。

 続けて、神谷氏は「日本人は不動産持ってたら必ず相続税でね、たくさん税金払わないといけないけれども、海外の人たちは払わなくていい」とも発言した。

 ◇海外居住でも課税対象

 国税庁資産課税課によると、法制度上、国外に居住している外国人でも、国内に不動産を所有している人については相続税の課税対象となる。相続税の納税義務者を明記した相続税法1条の3で定められている。

 国税庁のホームページでも「相続などで財産を取得した時に外国に居住していて日本に住所がない人は、取得した財産のうち日本国内にある財産だけが相続税の課税対象になります」と明記。相続税の納税義務者を示した表も掲げている。同課担当者は「『相続税を取りようがない』という発言は誤りだ」と指摘する。

 ◇神谷氏側が回答「制度と現実が乖離」

 毎日新聞は10日、神谷氏に対し、発言についての見解を書面で求めた。

 神谷氏側は11日、参政党事務局名の書面で回答。書面では「国税庁が制度的に課税可能としている点は承知している」とした上で、相続人が国外に居住し、住所や連絡先が不明な場合▽租税条約により情報提供が十分に得られない国との関係▽登記の名義変更が行われず、相続人が不動産をそのまま維持するケース(所有者が死亡した事実さえ、把握できないケースも生じる)――などにより、「徴税の実効性が著しく損なわれている状況がある」と説明。

 その上で、番組での発言について「こうした実態に照らして『相続税を取りようがない』と述べたものであり、制度の存在を否定するものではありません。制度と現実の乖離(かいり)に対する問題提起としてご理解いただければ幸いです」と記した。

 一方、国税庁は「当庁としては、国外居住の外国人が日本の不動産を相続したという場合でもしっかり調査をしている」としている。

 ◇神谷氏の発言全文

 私、この問題は財政金融委員会でも取り上げておりまして、これ一定のやっぱり規制をかけないとですね、どんどん日本人が買い負けするということを訴えております。

 でも国はですね、やはり日本人と外国人を差別するのはどうなんだ、というふうな回答をされるんですけれども、これは差別ではなくてちゃんとした区別であって、線引きをしないと結局、日本なのに日本人が買えなくて、外国人が都市部の良いところを持っているというのはやっぱり矛盾してます、ということであります。

 あともう一つ、日本には相続税というものがあるんですけど、オーストラリアとか中国とかですね、相続税ないからですね、彼らは買っておいて日本に住んでなければ、我々相続税取りようがないんですね。

 そうなると日本人は不動産持ってたら必ず相続税でね、たくさん税金払わないといけないけれども、海外の人たちは払わなくていいと。こうなるともうフラットな、平等ではないので、そういったやっぱり相続税を、彼らが自由に買えるんだったら、相続税をそもそもなくしてしまうとかですね、それぐらいの条件を整備しないとですね、日本も、日本人が買い負けるということになると思います。

 ◇ファクトチェックの判定基準

 ファクトチェックは特定の主義主張や党派などを擁護、批判することが目的ではありません。社会に広がっている情報が事実かどうか調べ、正確な情報を読者に伝えるのが目的です。これは国際ファクトチェックネットワーク(米国、IFCN)が掲げる国際的な原則「非党派性・公正性」に基づいています。

 記事はNPO「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のガイドラインに基づき、チェック対象の情報について表の通りの基準で真偽を判定(レーティング)しています。

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