核廃絶巡る国会議員討論会 国連事務次長、与野党8政党代表が参加
核兵器廃絶において日本が果たすべき役割を巡り、各政党代表による国会議員討論会が5日、広島市中区の広島弁護士会館であった。与野党8政党の代表が参加し、核廃絶に向けた思いや具体的な方法論などを述べた。参院選で核武装を唱えて当選した議員を擁する参政党や、日本保守党は欠席した。
討論会は核兵器廃絶日本NGO連絡会と核兵器をなくす日本キャンペーンが共催した。国連の中満泉国連事務次長は、核武装を強化する国があることや核の脅しが日常化していることなどに触れて「リスクがますます高くなっている」とした。その上で、2026年に開かれる核拡散防止条約(NPT)と核兵器禁止条約の再検討会議を「再び核軍縮に向かうきっかけにしたい」と述べ、日本政府に核禁条約会議へのオブザーバー参加について前向きに検討するよう求めた。
議員からは政府主催で国際会議を開催することや核廃絶の目標時期の設定、非核地域の拡大など、具体的なアイデアも披露された。また、自民以外の各政党はオブザーバー参加に前向きな姿勢を示した。自民の寺田稔議員は、核保有国による核廃棄プロセスが固まる段階にきた時には「我が国は核禁条約へオブザーバーではなく、正式参加すべきだと考えている」と述べた。
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳代表委員は「核禁条約参加への強い決意がほしい。米国の同盟国というだけで済まない重要な役割が日本にはある。もう少し具体的に前進してほしい」と話した。【西山夏奈、川原聖史、矢追健介】
◇主な参加者の発言は次の通り。
■中満泉・国連事務次長
核兵器を巡る状況が悪化を続けている。80周年を一つの契機として方向転換しなければいけない分岐点にある。来年は核拡散防止条約(NPT)、核兵器禁止条約、両方の再検討会議がある。再び核軍縮へ舵を切り直すきっかけにしたい。
4、5月のNPT準備委員会で非常に難しい状況が明らかになった。核軍縮に関して何ら進展が見られない。核保有国は核兵器近代化プログラムを継続し、核共有や核抑止を巡って非核兵器保有国の中でも分断が深刻になりつつある。リスクが高まる中で来年に向け合意点を探す必要がある。
核兵器禁止条約は来年の再検討会議で、今後5年間でどのような優先課題に取り組むのかを検討する。日本もオブザーバー参加を前向きに検討してほしい。
■寺田稔議員(自民党)
先月、3者(日本原水爆被害者団体協議会と原水爆禁止日本協議会、原水爆禁止日本国民会議)が核兵器保有国の行動を強く非難し、たしなめる共同アピールを採択した。まさしくその通りだ。核兵器保有国がしっかりと核軍縮を進め、核弾頭を減らし、核兵器なき平和な世界を目指さなければならない。核保有国の核兵器廃棄プロセスがルーティン化することが見えれば、当然我が国としても核兵器禁止条約のオブザーバーでなく正式参加をすべきだと考える。
■本庄知史議員(立憲民主党)
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル賞を受賞した機運を一過性にしないことが大切だ。
核兵器禁止条約は署名批准も視野に入れ、まずは締約国会議へのオブザーバー参加を決めるべきだ。核保有国と非核保有国の橋渡しを担うと言いながら、政府はリーダーシップを発揮できていない。核の傘の下にいることとオブザーバー参加は矛盾せず、橋渡し役にふさわしい立ち位置だ。戦後80年の節目に政府の決断を求めたい。
■空本誠喜議員(日本維新の会)
我が国の政府は核兵器廃絶という理想論は語るが、現実論は語っていない。唯一の戦争被爆国である日本が先頭に立って、核兵器廃絶を核兵器保有国にしっかりお願いするには、廃絶をいつまでにするかについて具体的にすることが近道ではないか。政府は目標設定を率先して行うべきだ。核兵器禁止条約へのオブザーバー参加はもちろん、将来的な正式参加を視野に取り組むべきだ。平和教育の充実、強化も大切と考えている。
■玉木雄一郎議員(国民民主党代表)
NPT締約国の再検討会議で、日本が(核保有国と非核保有国の)橋渡しをする事が必要だ。いかに(核兵器が)非人道的であるかを共有することから始める。戦争被爆国だけでなく、核実験で生じた環境破壊や被害を受けた人の救済についても共に取り組み、実績を積む。核を減らすことも共通目標にできる。
次世代を担うリーダーに核なき世界の重要性を認識してもらうという人材育成の取り組みも非常に重要だ。
■斎藤鉄夫議員(公明党代表)
核兵器の非人道性を訴え、核兵器禁止条約への日本のオブザーバー参加を訴えたい。党は核保有5大国の恒常的な対話の枠組みや米露中韓日と北朝鮮を想定した「北東アジア安全保障対話協力機構」を提唱している。日本は非核兵器国への核不使用の合意などに向けて、首脳外交を積極的に展開すべきだ。さらに非核兵器地帯条約の地域的な拡大を目指していくべきだ。朝鮮半島の非核化を進め、北東アジア非核兵器地帯構想もぜひ実現したい。
■田村智子議員(共産党委員長)
日本は、核兵器禁止条約の批准に向けて動くべきだ。そのため核抑止力論を克服することが求められている。核兵器の非人道性を告発することが重要。広島・長崎の地獄を告発し続けた被爆者の人道的アプローチが、核禁条約を誕生させた。この人道的アプローチこそ、核兵器を使うことを前提とする核抑止力論を乗り越える大きな力だ。被爆証言を私たちも受け継いで力を尽くしたい。核抑止力論を打ち破る議論を日本国内でも広げたい。
■櫛渕万里議員(れいわ新選組共同代表)
核保有国による武力行使が頻発する状況は、核兵器の保有や威嚇が戦争を防ぐという核抑止論の破綻を示している。参院選では日本が核兵器を保有すべきだとする人が8人も当選し、核兵器は安上がりと称する人が当選した。これまで非核三原則や核兵器廃絶を国民の総意としてきたが、その前提が崩れかけているのではないか。まず共通認識である核兵器の非人道性についての国際会議を、日本政府が主催して行うことを提案したい。
■福島みずほ議員(社民党党首)
来年、核兵器禁止条約締約国会議の再検討会議が開かれる。それまでに社民党は条約批准を(政府に)求めたい。国会の超党派で批准に向けて議論できる場を作り、進めていくつもりだ。東南アジア諸国連合(ASEAN)を含め、アジアの国々と、核軍縮に向けて力を合わせたい。
台湾有事などあってはならないし、核兵器使用は絶対にあってはならない。戦争を回避してどう平和を作るか、超党派や市民社会と一緒にやっていきたい
■田中熙巳(てるみ)・日本被団協代表委員
明日は広島原爆被爆の80周年を迎える。3日後は長崎だ。この重要なときに、核の問題は厳しい状況に私たちは置かれている。
私は長崎の被爆者。被爆者の立場からすると、被爆者たちが果たしてきた証言を通して核兵器の廃絶を求めていく。私たちにとっては最後の大きな年になるのではないか。討論に参加している人たちの討論を含めて、本当に核兵器の使用禁止から廃絶へ。被爆者の願いが着実に新たに開ける年にしたい。
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