高市氏、宣伝費に8000万円超 24年総裁選 水面下で巨費投じる

2025/11/28 17:49 

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 2024年の自民党総裁選を巡り、決選投票で敗れた高市早苗首相の政治団体が、宣伝のために8000万円超を支出していたことが、政治資金収支報告書から判明した。3位だった小泉進次郎防衛相側も、PR会社に約2000万円を支出するなどしており、多額の費用を投じた宣伝合戦が水面下で繰り広げられていた実態が浮かび上がる。

 24年総裁選は岸田文雄首相の辞任表明に伴い、9月12日告示、27日投開票の日程で行われた。1回目の投票で党員票が最多だった高市氏は、決選投票で石破茂前首相に敗れたものの、25年の総裁選を制する弾みになったとされる。

 高市氏の資金管理団体「新時代政策研究会」の収支報告書によると、24年の収入総額は繰越金を含めて約2億円。このうち8384万円を、告示直前と選挙期間中に宣伝費とみられる支出に充てていた。

 内訳をみると、ウェブ関連では▽動画制作や交流サイト(SNS)の活用などを手がける大阪市の広告会社に「宣伝広告費」3300万円▽選挙プランナーの故・藤川晋之助氏が代表の法人に「WEBサイト等企画制作費」500万円――を支出していた。藤川氏は、総裁選前にあった東京都知事選で2番手につけた石丸伸二氏の選挙参謀。高市氏側に、SNSを駆使する石丸陣営の手法を取り入れる狙いがあったとみられる。

 印刷物関連では、会報の「印刷及び封入費」「発送費」として、計4584万円を支出。これは、物議を醸した政策リーフレットの経費とみられる。

 党の選挙管理委員会は告示前に党員らへのPR文書の郵送を禁じたが、高市陣営は禁止決定前にリーフレットの発送手続きを行い、全国30万人以上の党員らに届いたとされる。他陣営から苦情が相次ぎ、選管が高市氏を注意する事態となった一方、高市氏が多くの党員票を獲得する一因になったと指摘された。

 24年総裁選は、高市氏にとって2度目の出馬だった。関連する過去の収支報告書によると、初出馬だった21年総裁選では1回当たり1000万円を超える宣伝費の支出はなく、2回目から宣伝重視の戦略に転換したことがうかがえる。

 ◇小泉氏も多額の宣伝費

 24年総裁選には、高市、石破、小泉各氏のほか、林芳正総務相ら計9人が出馬。毎日新聞が各候補者関連の収支報告書を調べると、高市氏以外に総裁選の宣伝費とみられる支出が多かったのは、初挑戦の小泉氏だった。

 小泉氏の資金管理団体「泉進会」と政党支部の収支報告書によると、「総裁選広報支援活動費」などとして都内のPR会社に2023万円を支出。さらに、総裁選との関連は不明だが、選挙直後に「キャンペーン費用」としてブランド戦略を手がける都内の企業に2919万円を払っていた。

 この他、総裁選期間中に、選挙の情勢調査などを請け負う企業にも1300万円を支出。結局、小泉氏は3位につけ、25年の総裁選では高市氏と決選投票で争うことになる。

 一方、24年の総裁選を制した石破氏の支出はどうか。資金管理団体「石破茂政経懇話会」と政党支部の収支報告書によると、総裁選用の支出と明記されているのは、「総裁選用リーフレット作成代」39万円と、「総裁選広報バナーSNS用作成費」3万円など、わずかしかない。

 両団体が24年中に支出した「宣伝事業費」の総額は1200万円ほどで、仮にこれらがすべて総裁選用だとしても、高市、小泉両氏の支出額には及ばない。

 自民党の総裁選は事実上首相を決める選挙とされてきた一方、公職選挙法の対象ではなく、選挙費用の上限規制や収支の報告義務はない。

 党は総裁選でのリーフレットの郵送や、オートコールによる電話作戦など、資金のかかる行為を禁じているが、違反しても罰則はなく、巨費を投じる宣伝合戦に歯止めがかからない恐れもある。【大場弘行】

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