「元気にしてる?」 ふと思い出す、大切な人へ 阪神大震災30年
阪神大震災から30年の節目を迎えた17日、兵庫県内の被災地では終日、追悼行事が営まれ、震災を経験した世代と知らない世代がともに祈りをささげた。神戸市中央区の東遊園地で開かれた追悼行事「1・17のつどい」には、過去2番目の多さとなる約7万5000人が訪れた。
「ふとしたときに思い出します」。3歳だった次女を震災で失った社会保険労務士、岡本智仁(ともひと)さん(63)=兵庫県宝塚市=は声を振り絞って、そう話した。
あの日の記憶は今でも鮮明に残る。7人で暮らしていた一家は、神戸市東灘区の木造2階建ての自宅で被災。1階で寝ていた次女の真奈ちゃんは、天井のはりが落下し亡くなった。
妻美也子さん(62)は「優しくて食べるのが大好きな子だった」と振り返る。生まれて間もない三女がストーブの前にいると、真奈ちゃんは「やけどするから危ない」と守ってくれた。
娘の名が刻まれた園内の銘板に触れた美也子さんは、目に涙を浮かべながら「元気にしてる? そっちは元気?」と心の中で語りかけたという。
兵庫県尼崎市の会社員、内田孝さん(76)はすし職人だった母に思いをはせた。母ゆきさんは神戸市灘区で営んでいたすし店を兼ねた自宅で被災した。翌日に倒壊した家屋の隙間(すきま)から見つかったが、既に息を引き取っていた。
内田さんは、母が作る巻きずしが好物だった。今でもすしを食べると「酢の入り具合を比べて母を思い出します」。7人きょうだいの末っ子。唯一、母に作り方を教えてもらう機会がなく「心残りです」と惜しんだ。
24年元日の能登半島地震で被災した人たちの姿も。神戸のNPOから招待された石川県立七尾高2年の増田若菜さん(16)は竹灯籠(とうろう)を見つめ「光が集まると大きな輝きになり、小さな一歩が復興につながるように感じた」と語った。「能登もみんなで寄り添いながら復興できるよう(担い手として)率先していきたい」
明石市の市立天文科学館は、震災の発生時刻「午前5時46分」に合わせて大時計(直径6・2メートル)の針を停止した。東経135度の日本標準時子午線が通る「時のまち明石」を象徴する時計を止めることで「30年前を思い出し、改めて防災を考える契機に」と企画した。【木山友里亜、面川美栄、木谷郁佳、日高沙妃、入江直樹】
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