埼玉の道路陥没、市民生活に影響 一部で回線使えず、下水道使用制限
埼玉県八潮市二丁目の県道54号交差点の陥没事故は30日、発生から3日目を迎えた。県は現場付近で実施した道路下の調査の結果、新たに危険な空洞は確認されなかったと発表した。今後もドローン(無人機)などでの空洞調査を続け、危険の有無を確認するという。復旧作業は長期化する見通しで、県は下水道使用の自粛要請を継続するとともに、汚水の川への緊急放流を始めた。
県によると、調査したのは現場付近の道路約2・5キロ。マイクロ波を照射する専用車両で調べたところ、数カ所で小さな反応があったものの危険な空洞は確認されなかったという。
ただ、30日には事故現場に生じた二つの穴がつながって一つになるなど、陥没の範囲は拡大している。県は追加の調査を実施して、31日にも結果を公表する方針。
また、現場を流れる雨水管が事故の影響で壊れ、そこから穴の中に水が流れ込んで救助活動などの妨げになっているといい、30日中に応急措置を完了させるとしている。
復旧が長引いていることで、市民生活への影響は広がっている。
八潮市の陥没現場から北に約16キロにある春日部市の春日部中継ポンプ場では、29日午後11時20分ごろから、下水を近くの新方川に流す緊急放流を始めた。県によると、下流で飲料水を取水している施設はないという。
汚水は塩素で消毒してから流しているが、川の周囲では臭いもあるため、同市環境政策課は30日朝、放流現場付近の水質などを確認する簡易調査を実施。「環境への今後の影響を監視していくのが目的。数値は処理前の汚水として想定の範囲内だった」としている。
同日正午からは、県が八潮市の一部区域で工業用水の給水を停止した。対象区域は同市の古新田、木曽根、二丁目で、区域内では3事業者が受水しているという。工業用水道管が同市の道路陥没箇所近くに埋設されており、漏水による2次被害を防ぐためとしている。再開の見通しは立っていない。
また、NTT東日本によると、同日午後6時半時点で、八潮市内の一部地域で、インターネットの光回線や固定電話約1700回線が使えない状態になっているという。
大野元裕知事は同日夜に開いた県の対策会議で、「中長期の影響が懸念される。県民の皆様には引き続き必要な協力をお願いします」と述べた。【鷲頭彰子、増田博樹、萩原佳孝】
◇住民支援の輪も
下水道使用の制限要請が続く県内12市町の周辺では、温浴施設が住民に対し無料での入浴を申し出るなど、支援の輪も広がり始めている。
八潮市に隣接する東京都足立区は30日、下水道使用制限対象区域の住民について、区内約20カ所の公衆浴場の入浴料を同日から当面無料にすると発表した。運転免許証など公的機関発行の身分証明書が必要。
草加市やさいたま市の一部温浴施設も、陥没現場周辺や下水道制限区域の住民の入浴料を無料や半額にするなどの支援サービスを実施している(一部は30日まで)。
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