衆院予算委、参考人招致の多数決は51年ぶり 安住氏「山を越えた」

2025/01/30 20:28 

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 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、衆院予算委員会は30日、旧安倍派の会計責任者だった松本淳一郎氏の参考人招致を議決した。ただ、証人喚問とは異なり、参考人招致は出席を拒むことができる他、虚偽の発言をしても罰則はない。松本氏も出席に否定的な考えを示しており、実態解明につながるかは不透明だ。

 「結果的に混乱なく可決できたことは一つの大きな山を越えた。自民1強時代は予算委で問題提起があっても投げっぱなしだった。与野党逆転の中で要求を速やかに取り上げ、結論に達したことは私なりの責任を果たしたのではないか」

 議決後、安住淳予算委員長(立憲民主党)は記者団に対し、感慨深げに語った。安住氏によると、参考人招致を多数決で決めたのは51年ぶり。田中角栄政権下の1974年、石油危機を受けた物価高騰を巡って大手石油会社社長らを招致した時以来という。安住氏は「全会一致が本当は望ましかった」としたが、少数与党政権下では自民が反対しても、野党が結束すれば野党が求める議案が通ることを実証した。

 松本氏は旧安倍派の事務局長で、昨年10月に政治資金規正法違反(虚偽記載)で禁錮3年、執行猶予5年の有罪判決が確定した。

 事件を巡っては2022年3月、当時会長だった安倍晋三元首相がノルマ超過分のキックバック(還流)の中止をいったん決めたとされるが、安倍氏が銃撃事件で死亡後に再開された経緯が未解明のままだ。

 松本氏は公判の被告人質問で、22年7月末に「ある幹部議員から『ある議員が還付(還流)の復活を求めている』と言われた」とし、当時会長代理だった塩谷立元文部科学相に相談したと説明。翌8月、塩谷氏と下村博文元文科相、西村康稔元経済産業相、世耕弘成前党参院幹事長の計4人が協議し、還流復活について「やむなしという結論に至った」と振り返った。

 しかし、衆参両院の政治倫理審査会では下村、西村、世耕の3氏が8月の協議について「結論が出なかった」と主張。塩谷氏は「しょうがないかなとなった」と発言するなど、関係者の見解が食い違っている。

 自民が昨年末、担当弁護士を通じて参考人として出席する意思があるか確認したところ、松本氏は「裁判で証言した以上の話はない」「公の場に出てくることは負担で、家族にさらなる迷惑をかけることになる」などとして否定的な考えを示したという。

 安住氏は来月10日をめどに予算委へ出頭するよう文書で要請したが、松本氏が応じなければ参考人質疑は実現しないこととなる。

 野党筆頭理事を務める立憲の山井和則氏は24日、「(招致を)議決して『来られません』というのは招致にならない。もし、そこで(自民が松本氏に出席するよう説得することを)『嫌です』というのだったら、証人喚問と言わざるを得ない」と述べており、証人喚問要求に発展する可能性もある。野田佳彦代表は30日の党会合で「解明には不可欠だ。国会に来てもらい説明責任を果たしてほしい」と語った。

 参考人招致は憲法の国政調査権に基づき、野党による疑惑解明と政権追及の手段として用いられてきた。

 18年には学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡って元首相秘書官を招致。21年には総務省幹部らへの接待を繰り返した放送事業会社「東北新社」前社長らを招致した。

 一方、証人喚問は正当な理由がなければ出頭や証言を拒むことができず、虚偽の発言をすれば偽証罪などに問われる可能性がある。学校法人「森友学園」への国有地売却問題を巡っては、17年に前理事長、18年に元国税庁長官を証人喚問した。【富美月、池田直】

毎日新聞

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