FRB議長「利下げ急ぐ必要ない」 トランプ氏のリスク見極めへ
米連邦準備制度理事会(FRB)が4会合ぶりに政策金利の据え置きを決めたのは、20日に発足したトランプ政権での物価上昇(インフレ)リスクを見極めるためだ。パウエル議長はトランプ大統領の掲げる関税引き上げなどの影響を精査する考えを示しており、市場では「利下げ再開はかなり先」との見方が増えている。
「政策調整を急ぐ必要はないと、多くの委員が考えている」。パウエル氏は29日の記者会見で、こう明言。次回3月会合での利下げ再開の可能性に否定的な考えを示した。
好調な個人消費にけん引される形で米経済は堅調に推移。2024年12月のインフレ率は2・9%と3カ月連続で前月を上回り、24年6月以来となる3%の大台が迫っている。
ただでさえインフレ再燃懸念が強まる中で不安視されるのが、関税強化を掲げるトランプ政権の動向だ。外国製品への大幅な関税引き上げは「小売価格への転嫁を通じてインフレをもたらす」と多くの識者が指摘している。
ただ、関税が実際にどれほどのインパクトをもたらすのか現時点で不明。トランプ氏は2月1日にもカナダ、メキシコに25%、中国に10%の関税を課すと示唆しているが、これは不法移民や合成麻薬の流入への対抗措置。各国が対策を講じれば回避される可能性があり、実行されるかどうか定かでない。
米国の巨額の貿易赤字解消を目的にした本格的な関税引き上げも4月以降になる見通し。対象とする国や品目、税率が決まっておらず、実際の影響について「待って様子を見るしかない」(パウエル氏)のが実情だ。
昨夏、一時的に悪化した米雇用情勢は足元で堅調に推移している。米経済腰折れへの懸念は小さくなり、FRBは追加利下げを急がなくてもよい環境にある。
パウエル氏は会見で「経済が力強さを維持し、インフレ率が2%に向かわない場合、長期にわたって金融政策を維持できる」と説明。市場では、3、5月会合では金利が据え置かれ、次の利下げは早くても6月会合との見方が出ている。
波乱要因となりそうなのが、トランプ氏のFRBに対する政治的な動きだ。23日には「すぐに金利を引き下げるよう要請するつもりだ」と明言し、パウエル氏と会談する考えまで示している。企業や個人の借り入れ負担を軽減するため、トランプ氏はかねて利下げを主張してきた経緯がある。
パウエル氏は会見で、まだトランプ氏とは接触していないと説明しつつ、この件について「コメントしない」と言葉少なに述べた。【ワシントン大久保渉】
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