「行き場」完成は繰り返し延期 原発にたまり続ける使用済み核燃料
四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)でこの夏、敷地内で使用済み核燃料を保管する「乾式貯蔵施設」の運用が始まる。現在使用中の「湿式貯蔵」より安全性が高いとされている。四電が2016年12月に新たな貯蔵施設の設置検討を表明してから8年半。「湿式」は既に約8割が埋まっている。四電は「一時的」な貯蔵を強調するものの、「行き場」の完成は繰り返し延期され、搬出したくてもできない状況が続く。
7月に新たに運用が始まる「乾式」は使用済み核燃料を金属製の特殊な密閉容器に入れ、外気で冷却する仕組み。「湿式」は、燃料をプールに入れて電気を使って水を循環させて冷却するが、何らかの事故が起きて停電した場合は機能しなくなる。そのため、乾式の方が安全性が高いとされる。しかし、原子炉から取り出したばかりの使用済み核燃料は発熱量や放射線量も高く、すぐに「乾式」で貯蔵はできない。「湿式」で15年以上冷却したものを移していく計画だ。
使用済み核燃料は2月末現在、唯一稼働する3号機プール(貯蔵容量1805体)に1475体が保管されており、既に8割以上が埋まっている。また、3号機プールのうち、205体分は年に1度実施される定期検査で一時的に核燃料を原子炉から移し替える場所などとして確保する必要がある。そのため、実質的には125体分しか空いていない。3号機の稼働に伴う使用済み核燃料は年に35~40体が新たに発生するといい、数年でいっぱいになる見込みだ。
ただ、運用開始予定の「乾式」は最大1200体を貯蔵できる。3号機プールとは別に、廃炉作業中の2号機プールにある使用済み核燃料316体を考慮しても、空きがなくなるまで20年ほど猶予があるという。
◇住民への説明、早期搬出の努力を
なぜ、使用済み核燃料が原発内にたまり続けるのか。四電は使用済み核燃料を再利用するため、青森県六ケ所村で建設中の再処理工場に搬出する方針を示している。しかし、当初1997年に完成予定だった同工場について、業務を担う日本原燃が2024年8月、27回目の延期を表明。「24年度上期」としていた完成時期は「26年度内」とさらに先送りになった。
伊方原発敷地内の貯蔵は、四電としてはあくまで同工場へ搬出するまでの「一時的」な措置であることが大前提だが、搬出のめどが立っていないのが実情だ。立地する伊方町も「あくまで一時的貯蔵」という姿勢は崩さず、早期の町外搬出を四電に促し続けている。町民からは「このまま町内でたまり続けるのではないか」「早く搬出してもらい放射能漏れなどの危険性を少しでも取り除いてほしい」といった声も聞こえる。
同町は18年度から使用済み核燃料に1キロあたり500円の課税を始めた。愛媛県も、19年1月から使用済み核燃料1キロあたり500円(24年1月から同600円)の課税を導入。立地自治体と立地県がそれぞれ使用済み核燃料に対して課税するのは、当時全国で初めての例だった。
町は23年度からは課税を10%引き上げ、1キロあたり550円とした。年間3億~4億円程度の税収となっており、原発災害対策の充実などに充てられている。「乾式」の設置について町民から「町内に使用済み核燃料が置かれ続けるのではないか」との不安の声も寄せられていて、四電に搬出を強く促す狙いもある。
四電にとって負担は軽くない。担当者は、支払った分が原発立地に伴う安全・防災対策に活用されていることを挙げ「地域における防災対策や地域振興が円滑に進み、地域と伊方原発との共生が一層図られることを望んでいる」と述べるにとどめた。
再処理工場が完成しない状況が長年続くという外的な要因が大きいとはいえ、四電には町民や県民への丁寧な説明と早期搬出への努力が求められる。【山中宏之】
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