逮捕・起訴の違法性を否定 プレサンス元社長の賠償請求棄却
大阪地検特捜部が手掛けた業務上横領事件を巡り、無罪となった不動産会社元社長の山岸忍氏(62)に対する捜査の妥当性が争われた訴訟の判決で、大阪地裁は21日、「逮捕・起訴は不合理だったとはいえない」と述べ、違法性を否定した。小田真治裁判長は山岸氏が国に7億7000万円の賠償を求めた訴えを棄却した。山岸氏側は控訴する方針。
この事件では、山岸氏の元部下への取り調べで田渕大輔検事(52)が「検察なめんなよ」と怒鳴り、机をたたいた言動が明らかになっている。
山岸氏は「プレサンスコーポレーション」(大阪市)元社長。学校法人元理事長らと共謀し、法人の土地を売却した際の手付金21億円を着服したとして2019年に逮捕・起訴された。
21年の大阪地裁判決は山岸氏の関与を認める元部下の証言について、田渕検事の圧力があったとして信用性を否定。山岸氏を無罪とし、検察側が控訴せずに確定した。山岸氏は捜査で苦痛を受けたとして提訴した。
この日の判決は「無罪が確定したからといって、ただちに捜査が違法とならない」とする最高裁判例の枠組みを踏襲。捜査を指揮した主任検事が逮捕や起訴の段階で、山岸氏の容疑を適切に判断していたかを検討した。
まず、起訴の妥当性については山岸氏の関与を認める関係者証言などを踏まえると、「共謀があったとする見立てには一定の合理性があった」と評価した。
そのうえで、田渕検事による元部下への取り調べは「畏怖(いふ)や迎合を誘発する危険で不適切な方法」と批判。ただ、元部下が検事の発言を否定するなどしていたことから、起訴段階では威迫の影響が明らかではなく、証言を信用できるとしていた捜査は問題とならないと判断した。
山岸氏を逮捕したことについても「重大な過誤はなかった」と指摘。「後から見れば判断の誤りとの批判を受ける部分がある」としつつも、一連の捜査は違法ではなかったと結論付けた。
田渕検事は特別公務員暴行陵虐の罪で刑事裁判を受けることが決まっている。大阪地検の田中知子・次席検事は「適法だとの国の主張が認められたと理解している。取り調べは適正な実施に努める」とコメントした。【木島諒子、高良駿輔】
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