ノーサインで優位に エナジック創部3年目で初出場初勝利 センバツ
◇選抜高校野球1回戦(21日・阪神甲子園球場)
◇○エナジックスポーツ(沖縄)8―0至学館(愛知)●
塁に出ると何をしてくるか分からない。そうやって相手にプレッシャーをかけて得点につなげるのが、エナジックスポーツの戦い方だ。印象づけたのが、相手の先発投手が代わった七回。相手を惑わせて優位に立った。
至学館は2番手・磯村怜穏(れお)がマウンドに上がった。エナジックスポーツは、先頭打者の宮里康平が四球で出塁して気づいた。「けん制がかみあっていない」。けん制球を多く投げさせるうち、相手投手の戸惑いを感じ取った。
内野安打と内野ゴロの間に1死二、三塁の好機を作り、打席に入ったのは3番・砂川誠吾だ。1球目は外角高めに外れ、2球目も外角低めの変化球がボールになった。相手バッテリーが、スクイズを警戒しているのは明らかだった。
しかし、スクイズの考えはなかった。3球目。砂川は真ん中高めに甘くきたところを逃さず強振すると、打球は左翼手の頭上を越える2点適時三塁打となった。四球、内野安打、長打とさらに畳みかけてこの回一挙6得点のビッグイニングを作った。
エナジックスポーツは、自主的に攻撃の戦術を決める「ノーサイン野球」を掲げる。試合中はベンチからサインが出ず、攻撃での意思疎通は相手に気づかれないようにアイコンタクトでとる。練習から、一つのプレーが終わればグラウンド上で15分以上もの間、選手だけで議論を交わして共通認識を作り上げてきた。
ノーサイン野球を至学館側はどう感じたのか。捕手・井口睦丈は「何をしてくるか分からないので、何もかも迷った」。鈴木健介監督も「足が速いとか盗塁するとかとは違う見えない部分で、相手がうちの投手陣を上回った印象。何を考えているのか分からず、相手の展開にしてしまった」と翻弄(ほんろう)されたことを悔やんだ。
創部3年目で春夏通じて初の甲子園出場を果たし、持ち味を発揮してつかんだ歴史的1勝だ。宮里は「相手の心を読むのもうちの野球。チームとして結果が出せてよかった」と満足げだった。【林大樹】
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