智弁和歌山エース・渡辺「脱力投法」でマダックス達成 センバツ
◇選抜高校野球1回戦(21日、甲子園)
◇○智弁和歌山6―0千葉黎明●
最後の打者を仕留めると、智弁和歌山のエース・渡辺颯人(はやと)は、小さなガッツポーズで喜びを表した。千葉黎明打線に投じた球数はわずか「90」で、今大会初の100球未満での完封「マダックス」を達成。緻密な制球力を持ち味とし、米大リーグ通算355勝の名投手グレグ・マダックスにちなんだ快投をやってのけた。
序盤はボールが先行した。「軽く投げても球が思った以上に制御できない。どこか気持ちもふわっとしていて……」。二回2死から連打を浴び、一、三塁のピンチを迎えた。
だが、ここでスイッチが入った。次打者に高めの直球で挑んで追い込み、最後は自己最速の145キロでバットに空を切らせた。
自身の本来のスタイルを思い出し、その後は冷静さも取り戻した。140キロ前後の直球、縦に割れるカーブを淡々とコースに投げ、時折クイックも織り交ぜて相手を翻弄(ほんろう)した。
三回以降は被安打2、二塁すら踏ませなかった。無安打に抑えられた千葉黎明の4番・佐々木悠晴は「間合いをうまく使われた」と唇をかんだ。
冷静な投球の原動力は、昨夏の甲子園の苦い経験にある。初戦の霞ケ浦(茨城)戦で六回から救援したが、延長十一回に勝ち越し打を浴びた。
いつも気迫全開の投球は魅力だ。だが「(体力が)もたないし、やっぱりしんどい」。スタイルチェンジを決意した。
ピンチでの全力投球は変えないものの、普段は下半身主導で、腕は6~7割程度と力を入れすぎないようにフォームを修正した。出力が落ちないようにするため、この冬はウエートトレーニングで筋肉量を増やすようにした。
智弁和歌山は2021年夏に甲子園を制したが、春は19年以降、白星がなかった。
6年ぶりのセンバツ勝利を完封でチームにもたらし、「今日はピンチがなかったので冷静でした。でも、うれしい」。最後は少しだけ、ほおを緩めた。【牧野大輔】
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