JR四国、日中に線路保守作業を実施 背景に人手不足
鉄道の保守作業は通常、列車の運行を終えた深夜帯に行われる。しかし、近年は日中に行うケースが全国で広がりつつある。JR四国でも2月に初めて実施された。背景には、人手不足で夜間の作業員確保が難しくなっている現状がある。
2月12日午前10時過ぎ。愛媛県宇和島市のJR高光駅では小雨の降る中、線路も走れる特殊な重機を用いて、8人の作業員が線路に敷かれる砂利「バラスト」の交換作業を進めていた。
同社では同日を含め、2月の平日5日間の日中約6時間、予讃線の八幡浜―宇和島駅間で列車を止め、線路周辺施設の点検や手入れを進めた。バラスト交換以外にも、沿線樹木の伐採や列車が入る路線を切り替える「分岐器」の検査など一日当たり5カ所程度で30人ほどが従事した。
影響を最小限にするため、同社が最も考慮したのは作業日時の設定だ。高校や大学の入試日を避けるだけでなく、通勤・通学時間帯を外した午前9時ごろから午後3時ごろに決めた。また、この間に運行する上下各7本を止めることに伴い、代行バスを走らせた。利用者に迷惑をかけることは避けられないため、運休について工事の約2カ月前から周知し、ウェブサイトでの告知や周辺住民へのチラシの配布などで理解を進めていった。
なぜ列車を運休させてまで日中に保守作業を行うのか。
同社保線課の徳武康一副長は「労働人口の減少で保守の作業員確保が難しくなってきている」と明かす。
苦肉の策のように思えるが、メリットも大きい。昼間だと周辺を見渡しやすくなるため、作業の安全性が向上し、作業員の身体的な負担も軽減される。夜間に比べて近隣住民への騒音の影響が少なくなるといった利点があるという。
また、沿線の樹木伐採は以前から日中に行うこともあったが、列車の通過時はその都度、作業を取りやめ、器具の撤去もしなければならない。今回のように列車を止めた上で実施することで作業効率が上がるという。同社としては今後も日中への切り替えを進める考えだが、大多数は夜間であることに変わりはない。
同様の取り組みは既にJR東日本や西日本などで行われている。JR九州では、働き方改革や作業員確保などを目的に2010年度にスタート。夜間なら必要な照明などの器具も不要で、安全性向上にもつながっているという。利用者への負担はあるが「近隣学区の試験日やイベントに配慮している」と同社担当者。事前に自治体などにも説明し、理解を求めているという。
JR四国の徳武副長は「昼夜の不規則な作業はつらく、携わる人も集まりづらい。働き方改革の一つとして、日中でもできることを広くアピールして人員確保を進めたい」と語った。【山中宏之】
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