なぜ千葉で? 施設脱走し「キョン」大繁殖 8万頭超どう向き合う

2025/04/06 07:15 

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 中国や台湾に生息し、1960~80年ごろ千葉県勝浦市の観光施設から逃げ出したことで県内で繁殖したとされる特定外来生物「キョン」。県は完全排除を目指すが、2023年度末時点で推定約8万6000頭おり、これまでに17市町で生息が確認された。この動物とどう向き合うべきか。県環境審議会委員を務める麻布大の加瀬ちひろ講師(動物行動管理学)に聞いた。【中村聡也】

 ――キョンってどんな生き物ですか?

 ◆頭までの高さが約50センチと中型犬くらいのシカ科の動物です。オスには角と上顎(うわあご)に牙があり、メスは早ければ生後半年で子どもを産みます。「ギャー!」と鳴くのが特徴です。運動能力も高く跳躍力は80センチほどです。

 栄養価が高い花などを好みます。常緑低木のアオキやツバキの花、農作物では大根の葉などを食べます。

 ――なぜ県内で増えているのですか。

 ◆一つは気候や環境があります。生息が確認されている房総半島は温暖で、千葉は全国有数の農業県です。栄養の高い食べ物が多く、キョンの生活に適しています。

 もう一つ考えられるのが、増加ペースに捕獲量が追いついていないことです。県の23年度の捕獲数は1万頭余りでした。一方、キョンの自然増加率は推定18~34%とされており、仮に前年比で34%増なら、2万頭以上捕獲しないと前年から減らない計算になります。

 ――減少の可能性はありますか。

 ◆キョンは好奇心が旺盛で新たな環境にも順応しやすい性格です。移動先は緑地帯に限らず、どこでも暮らしていける素質を備えています。それを考えると、県内の生息数や生息地は今後も拡大すると考えられます。減少に転じるには生息数の密度が高いところで捕獲を増やすと同時に、生息密度が低いところでも力を入れていくことが大切です。

 ――排除するため、捕獲以外にできることは?

 ◆国内に生息するキョンは栄養状態が良く、これが繁殖の拡大につながっている可能性があります。対策の一つとして、農作物を食べさせないことが重要です。ジャンプしても届かない高さに柵を張るか電気柵を設置して畑を守ることで、繁殖力の低下にもつながるとみています。

 ――生息数や生息地が増加した場合、キョンとどう向き合うべきですか。

 ◆近年、テレビ番組でよく取り上げられています。事業展開の動きもあり、ジビエ料理の食材などにも使われています。

 一方、私たちはキョンをどこまで理解しているのか。野生動物との向き合い方が問われている気がします。「野良猫」のように普段から目にする存在になった時、どうするか。研究者として、捕獲以外の問題解決方法を探る必要性も感じています。

 ◇かせ・ちひろ

 1985年、川崎市生まれ。千葉科学大助教時代の2015年ごろ、キョンの研究を始める。生息地の一つでもある伊豆大島を抱える東京都の特定外来生物防除対策検討委員も務める。

毎日新聞

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