「お前もか キャベツも米も…」 しゅふ川柳が映し出す今年の世相

2025/04/06 16:46 

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 <お前もか キャベツも米も 出世する>

 <定年後 妻に仕える 新入社員>

 求人サイト「しゅふJOB」の運営会社「ビースタイルメディア」(東京都新宿区)が主催する「しゅふ川柳」。3回目となる今年は、3月3日までに過去最多の4525句の応募があった。

 五・七・五に込められた嘆きや喜びから見える今年の世相は――。

 しゅふ川柳は、「はたらく」▽「家計」▽「母の日」「父の日」――の3部門があり、2025年の応募作品は24年(2991句)の1・5倍に上った。応募者の年齢は16~100歳と幅広く、男女は半々だった。

 最も目立った話題は「物価上昇」で、特に「野菜」関連が約100句、「米」関連が約350句に上った。

 例えば、社員による1次審査を通過したノミネート作品45句にはこんな川柳がある。

 <キャベツ見て ほうれん草見て もやし買う>

 <備蓄米 待ってはくれぬ 食べ盛り>

 また、年収が一定額を超えると手取りが減る「年収の壁」について詠んだ作品も多数あり、「働きたいのに働けない」というもどかしさが表現されている。

 労働契約の更新に関する職場とのやりとりで回答に困ったというパートタイマーの女性(32)は、<「どのくらい働けますか?」「壁次第」>と詠んだ。

 実際、しゅふJOBに登録する就業中の男女671人を対象に1~2月に実施した「年収の壁」に関する調査でも、34・3%が「働き控えをしている」と回答。その影響として半数近くが「生活に必要な収入を得られていない」としていた。

 「主夫」に関する作品も約150句あり、注目度の高さがうかがえた。

 ほとんどが50代以上で、定年後、主夫として慣れない家事に奮闘する姿などが詠まれた。

 <パパの家事 一事が万事 惨事付き>

 <子を寝かせ 深夜内職 闇ファイト>

 ビースタイルメディアの担当者は「共働きが増えている影響もあり、男性も家事育児に主体的になっていることがうかがえる」と話す。

 今後の展望については「職場環境の改善が進めば、仕事と家庭を両立する『兼業しゅふ(主婦・主夫)』がさらに増加し、多様なライフスタイルの実現が加速すると考えられる。主夫という存在がより一般的になっていくかもしれない」と分析する。

 ◇特徴は子育て世代の課題

 ビースタイルメディアの石橋聖文社長は「今年は特に、子育て世代が直面する課題がより色濃く表れているように感じた。仕事もして、家計も管理して、それでも物価の上昇に給与が追いつかないという現実の中で、限られた家計をどうやりくりするかという、怒りや工夫が行間から強く伝わってきた」とし、「川柳という少しふかんしたユーモラスな表現を通じて、同じ境遇の人たちが共感できたり、社会全体にこうした現実があると知ってもらったりするきっかけにもなればと願っている」とコメントした。

 今後は1次審査を通過したノミネート作品45句について、一般投票などによる2次審査、ゲスト審査員らによる最終審査が行われる。

 ウェブを通じた一般投票の締め切りは8日午後11時59分。24日に各部門の大賞などが発表される。【近藤綾加】

毎日新聞

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