とろける甘さで「日本を明るく」 万博とソフトクリームの意外な関係
冷たくて甘いソフトクリームは、日常のちょっとしたご褒美的存在だ。食べ歩くのも楽しいし、お店でゆっくり味わうのも幸せを感じる。今はさまざまな場所で食べられるソフトクリームだが、全国に広まったきっかけは、1970年の大阪万博だという。大阪・関西万博のさなか。これは調べてみなくては!
ソフトクリームで忘れられないのは、幼きころにスーパーで食べたバニラとチョコのミックスソフト。スーパーに行くたびにねだるほど好きだったし、溶けてコーンから垂れて洋服が「大惨事」になったことも思い出深い。学生時代に旅行先で食べた、カニみそ風味のソフトクリームも衝撃的だったな……。
◇みんな大好き。その語源は…
日本で唯一のソフトクリームの総合メーカー「NISSEI」(日世、大阪府茨木市)の広報担当、渡辺桜さんに聞いた。
日世は、日系2世の田中穣治さんらが英語力を生かして創業した貿易会社で、最初はアクセサリーなどを扱っていた。米国で人気だった「ソフトサーブアイスクリーム」を知り、「戦後の日本を明るくしたい」と、ソフトクリームを絞り出して作るのに使うフリーザー10台を輸入。51年に大阪のデパートでデモ販売をしたところ好評で、本格的に売り出した。かけそばが1杯15円だった時代に、1個50円と高価だったが、飛ぶように売れた。「実は『ソフトクリーム』という言葉は創業者が考えた和製英語なんですよ」と渡辺さんが教えてくれた。
ソフトクリームのもとになるミックスやコーン、フリーザーは当初、すべて輸入していた。しかし、コーンは輸送中に破損したり湿気を吸ったりで、売り物にならないことも多かった。まずは53年から自前で作ったコーンを売り始めた。続いて63年にフリーザー、66年にはミックスも自社製造へと切り替えた。
ちょっと待ってください。ざっくり言えば、ミックスは乳製品、コーンは焼き菓子、フリーザーは機械で、まったく違うものですよね。「そうなんです。それぞれ別に工場があるんですよ」と渡辺さん。ソフトクリームに必要なものを、全部自分たちで用意するなんて、すごい!
大阪万博が開かれたのは、総合メーカーとしての体制が整って間もない70年のこと。これを機にソフトクリームを広めようと、社内で作戦を練り、「太陽の塔」のそばに直営売店を構えた。機械の故障に備えて、メンテナンスチームを常駐させる徹底ぶりだ。他社も含め、会場内に約200台のフリーザーが置かれ、ソフトクリームの食べ歩きが人気に。そのニュースや来場者の口コミもあって、全国的に取扱店が増えるきっかけになった。
◇味は累計100種類超、組み合わせ無限
今ではすっかり身近になり、売店だけでなくカフェやコンビニエンスストア、道の駅などでも販売されている。そうそう、気になっていたんですけど、普通の白いソフトクリームでも、お店によって味が違いますよね。渡辺さんは「実は日世が販売しているミックスは、ミルク系の白いものだけでも常時8種類あります」とにっこり。乳脂肪分の割合などが異なっており、用途に合わせて選べる。フレーバータイプは抹茶やチョコレートなど定番のほか、国産の果物などを使った期間限定商品などもあり、すべて合わせると年間で35種類も販売している。
さらに、こだわりの材料を加えたオリジナルソフトクリームが作れるよう、お店をサポートしている。「日世がこれまで販売した味を累計しても100種類を超えますが、それぞれのお店で作られた商品などを合わせると数え切れないですね」と渡辺さんは明かす。厳選素材のソフトクリームや、地元の特産品を生かした「ご当地ソフト」は、見つけるとつい食べてしまいます。
コーンも定番の円すい型だけでなく、花びらのように端が広がったもの、甘いワッフルタイプ、カップ形などあれこれあって楽しい。そういえば、最近のコーンは食べ終わるまで、あんまりブヨブヨにならないですね。「最後までおいしく食べられるように、改良しているんですよ」と渡辺さん。企業努力のおかげなんですね。
絞り口も星形だけでなく、丸形や細いものなど12種類もある。ドリンクやパフェ、かき氷などに乗せて提供しているお店もあり、組み合わせは無限だ。
店頭でよく見かけるソフトクリームのディスプレーを広めるきっかけをつくったのも日世。販売促進のため取引先に無償提供すると、多くの店に置かれるようになった。あのディスプレーに、つい引き寄せられます。
渡辺さんは「ソフトクリームは外出先でしか食べられないもの。自分へのご褒美でも、誰かと一緒でも、思い出とともにあることが多いと思うんです。これからも皆さまのニーズに応えながら、ささやかな幸せを届けていきたいです」と語る。笑顔と幸せの記憶は溶けてしまうことなく、脈々と心の中に息づくだろう。【水津聡子】
◇万博限定ソフトで未来体験
大阪・関西万博には、日世の直営店が2カ所ある。「大阪ヘルスケアパビリオン」では、乳・卵を使わない会場限定のソフトクリームを販売。「演出付きの自動盛り付けマシン」にコーンを入れると、日世のキャラクターの「ニックン」と「セイチャン」のアニメーションとともに、自動でソフトクリームを作ってくれる。おお、未来体験! 乳・卵不使用とは思えないほどクリーミーで、後味はさっぱり。米粉を使ったコーンもサクサクしておいしい。渡辺さんは「アレルギーの方にも、楽しんでいただけたら」と話す。
大阪外食産業協会(ORA)が出展している外食パビリオン「宴~UTAGE~」では、大阪万博の味を再現した「バニラ1970」や、濃厚なクリームとラングドシャのコーンが人気の「クレミア」の抹茶味などを販売する。こちらも会場限定だ。直営店以外でも、ソフトクリームを取り扱っているパビリオンや店舗は30カ所以上あり、食べ歩くのも楽しそうだ。
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