被災企業支援 使う見込みない資金95億円を滞留 会計検査院が指摘

2025/06/03 20:52 

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 東日本大震災で被災した中小企業に施設や設備の復旧資金を貸し付ける支援事業を巡り、国の出資金を元に事業を運営する独立行政法人「中小企業基盤整備機構(中小機構)」が貸し付け見込みのない資金95億746万円を内部に滞留させていたことが3日、会計検査院の調査で判明した。検査院が「不適切」と指摘し、中小機構は全額を国庫に納付した。

 検査院によると、資金の滞留が確認されたのは「東日本大震災に係る被災中小企業施設・設備整備支援事業」で、2011年8月に始まった。中小機構からの貸付金は総額約1400億円に上る(23年度末時点)。財源には、震災前から中小機構が保有していた資金のほか、この復旧支援事業に使途を限って国が12年に追加出資した500億円が充てられてきた。

 検査院は追加出資分の500億円について、貸し付けや返済の状況を調べた。その結果、24年4月までに95億8127万円が中小機構に返済される一方、再び貸し付けたのは16年度の7381万円にとどまり、差額95億746万円の滞留が判明。検査院の担当者は「追加出資分は復旧支援事業のみを目的とする資金。利用しないのであれば不要財産として国庫に納付しなければならない」としている。

 被災地でハード面の復興が進むなど、復旧支援事業へのニーズが「ピークを過ぎた」ことも資金滞留の背景とみられる。中小機構によると、17年に検討を行った際は貸し付けの可能性があるとして保有資金を不要財産とはみなさず、その後は被災地の復興状況などを考慮した検討が不十分だったという。【山田豊】

毎日新聞

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