ティラノサウルスの新種を発見 「進化の空白」穴埋めか 北大など

2025/06/12 00:00 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 モンゴルの白亜紀後期(約9000万年前)の地層から、肉食恐竜ティラノサウルスの新種を発見したと、北海道大とカナダ・カルガリー大などの国際研究チームが12日付の英科学誌ネイチャーに発表した。全長は約4メートルで、大型ティラノサウルス類の共通祖先に当たる。これまでティラノサウルスの進化の過程は謎に包まれていたが、「進化の空白」を穴埋めする成果になるという。

 新種恐竜はモンゴル語で「王子の竜」という意味を持つ「カンクウルウ」と命名された。体重は500キロ未満で細身の体つきをしているなど、ティラノサウルスの幼体と似た特徴を持っている。

 ティラノサウルスは大型の種がよく知られる。白亜紀末期(約8600万~約6600万年前)には、北米ではティラノサウルス・レックスが、アジアではタルボサウルスが陸上生態系の頂点として君臨していた。

 いずれも頑丈な骨格を持ち、体重は数トンに及ぶ大型ティラノサウルス類だが、進化の道筋に至る中間に位置する化石が少なく、共通祖先の発見が期待されていた。

 チームは、約50年前にモンゴル・ゴビ砂漠で発見され、アレクトロサウルスという別のティラノサウルス類に仮分類されていた化石を分析した。その結果、足の形がアレクトロサウルスと異なるなどしており、新種と判明した。

 カンクウルウの発見により、進化の過程も明らかになってきた。ティラノサウルスは北米起源とする説があったが、祖先はまずアジアで誕生し、陸続きだった北米との間を行き来しながら大型化したと考えられる。カンクウルウからは大型ティラノサウルスだけでなく、体重約750キロの恐竜アリオラムスという子孫が誕生したともみられ、恐竜が時代とともに成熟する過程を探る手がかりも得たとしている。

 11日に開かれた記者会見で、小林快次・北海道大教授は「これまで進化の中間にあるティラノサウルスの化石記録は乏しかった。これで滞っていた研究が大きく進むだろう」と意義を語った。【田中泰義】

毎日新聞

社会

社会一覧>