長崎原爆の日式典に台湾が参列可能に 台湾被爆者遺族「待ち望んだ」

2025/07/08 18:53 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 長崎市が「長崎原爆の日」の8月9日に開く平和祈念式典に台湾代表の参列を初めて認めたことについて、台湾出身の被爆者の遺族から「待ち望んでいた」と喜びの声が上がっている。市は当初台湾に案内を出さない方針だったが、台湾から参加希望の意向が寄せられて一転した。8月6日に式典を行う広島市も台湾の初参列を認めている。

 2度の原爆投下では、日本統治下の朝鮮半島や台湾出身で日本本土に暮らす人も大きな被害を受けた。

 「8月9日が来るたびに、父は家族に当日の様子や原爆の恐ろしさを伝えていた。健在なら(式典に台湾の代表が参列できるというニュースに)喜び、自分も行きたいと言っていたはずだ」

 台湾南部・嘉義(かぎ)出身の医師で長崎市内で被爆した王文其(おうぶんき)さん(2015年に96歳で死去)の五男、王柏東(はくとう)さん(69)は毎日新聞の電話取材にこう声を弾ませた。

 王文其さんは1937年に長崎に留学。爆心地から約700メートルの長崎医科大(現在の長崎大学医学部)付属病院で診療中に被爆した。同窓生の調査では同大で18人の台湾出身者が被爆死した。

 戦後、台湾に帰郷した王文其さんは内科医院を開業する一方、長く日本政府の援護の対象外とされてきた在外被爆者の一人として慰謝料請求訴訟に加わり、12年に賠償を認める和解を勝ち取った。「同じ被爆者として認めてほしい、というのが父の願いだった」(王柏東さん)

 厚生労働省によると、3月末時点の在外被爆者は2178人。台湾は「10人未満」という。

 長崎市は当初、日本に在外公館がある国・地域や国連代表部を設置する国に式典の招請状や案内状を送ると発表。これに該当しない台湾からの参列の意向を受けて検討した結果、鈴木史朗市長が7月5日、「出席いただけます」と台湾に回答したことを明らかにした。

 台湾外交部(外務省に相当)の報道担当者は8日の記者会見で長崎市の決定を歓迎し、「参列が実現すれば、(台湾が進める)自由や民主、平和の価値観に基づく外交が支持された表れになる」と述べた。市から通知が届き次第、人選を進めるという。【台北・林哲平】

毎日新聞

社会

社会一覧>